「報道の自由は暴政の犠牲となった」 香港・リンゴ日報が最後の新聞発行

2021年6月24日 19時49分
 【上海=白山泉】中国への厳しい論調で知られた日刊紙「蘋果(リンゴ)日報」は24日、最後の新聞発行を終え、多くの民主派市民に惜しまれながら26年の歴史に幕を下ろした。7月に中国共産党創立100年の重要行事などを控える中で当局は言論統制を強めており、報道の萎縮が他メディアに広がる懸念もある。

24日、香港で廃刊する蘋果日報の最後の新聞を買い求める人々=AP・共同

◆100万部印刷 数百人の市民が列

 香港メディアによると、23日夜、最終号を製作するリンゴ日報本社前には大勢の市民が集まりエールを送った。九竜半島・旺角の新聞販売所では未明から数百人の市民が列をつくり、配達された新聞を次々と購入した。
 リンゴ日報によると、この日印刷したのは通常の13倍の約100万部。1面には「香港人、雨中のつらい別れ」の大見出し。本社前に集まった市民の「私たちはリンゴを支える」との声援を大きく掲載した。

24日付の香港紙、蘋果日報を掲げる人=ロイター・共同

 また、香港国家安全維持法(国安法)違反の疑いで逮捕、保釈中の陳沛敏副社長が社説を執筆し、「報道の自由は暴政の犠牲となった。土に埋葬されたリンゴの種から、再び木が育ち、さらに大きなリンゴが豊かに実る日を望む」と将来世代のメディア人に希望を託した。
 同紙を発行する「壱伝媒(ネクスト・デジタル)」は23日、香港での廃刊を決定。会社の資金移動が国安法違反に当たると警告され、運転資金が回らなくなった。編集幹部を含む6人も同法違反の疑いで逮捕されたため、社員の安全などを考慮して廃刊を前倒しした。
 当局がリンゴ日報や民主派への取り締まりを強化するのは、7月1日に中国共産党創立100年や香港返還24周年など習近平指導部にとっての重要行事が控えているためだ。

最終号の新聞製作を終え、蘋果日報本社で拍手する社員ら=23日、香港で(ロイター=共同)

 言論統制の強化が強まる中、香港記者協会は声明で「逮捕者の罪が決まっていない段階で新聞が廃刊に追い込まれることはふさわしいのか」と非難し、香港政府に報道の自由を保障するように求めた。民主派議員は「記事のどの内容が国安法に触れるか分からない」と他のメディアへの影響に懸念を示した。
 中国外務省の趙立堅副報道局長は24日、「報道の自由は免罪符ではない」と強調し、海外世論の批判に不満を示した。

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