在留資格失った姉妹、母が進行がんに 「まだ日本で働きたい...」

2021年6月25日 06時00分
 日本で育った南アジア出身の姉妹が、日本の男性と再婚して離婚した母親(46)とともに在留資格を失い、苦境に追い込まれている。母親はがんで倒れ、多額の治療費が必要に。大学を自主退学した長女(20)は「苦労して育ててくれた母を助けたい。在留特別許可を得て働きたい」と訴えている。 (望月衣塑子)

在留特別許可 強制送還の対象となる外国人について法相が裁量で在留を認める制度。明確な基準はなく、出入国在留管理庁は、日本人との結婚などの家族の生活状況や、本国の情勢などを考慮して判断するとし、期間は3年以内で認められ更新もできる。強制送還に不服があり、外国人が異議を申し出た段階で、在特を出すかどうか決める。難民認定申請者に対し、難民とは認めないが、人道的配慮から在特で滞在を認める場合もある。

「娘には苦労かけた」と話す南アジア出身女性(左)と長女のミナさん(仮名)=都内で

◆離婚きっかけ、母は入管へ収容

 長女は5歳だった2007年5月、母国で現地の男性と離婚した母親に連れられて、当時1歳の妹(16)と来日した。母親は日本人男性と再婚し、3人は「日本人の配偶者等」の在留資格を持ち、東京都内で暮らしていた。
 ところが母親は10年に男性と離婚。その後、介護福祉士の資格を得て、朝から晩まで介護と清掃の仕事を掛け持ちし、近所の住民らの助けも借りながら長女ら姉妹を育てた。
 長女は中学2年の時、バレーボールの市大会で3位に入賞し、関東甲信越の選抜チームにも選ばれた。母親は試合の度にキャラ弁(動物やアニメのキャラクターなどを表現した弁当)を作ってくれた。離婚後も母子の幸せな生活が続く中、母親は姉妹のために日本に残る道を模索し、弁護士に相談していた。
 しかし、15年8月に一家の生活が一変した。母親が不法残留で入管施設に収容され、長女と次女も在留資格を失った。
 中学生の長女は「いじめられるかもしれない」と友人にも相談できなかった。弁護士事務所に電話すると「頭金で5万円」と言われ諦めた。小学5年の妹と、日本にいる親戚のもとに身を寄せた。
 2カ月後、母親は入管施設から仮放免され、一家3人の生活が再び始まったが、収入はゼロ。長女らは国民健康保険からも外れ、病院での治療も10割負担に。次女が発熱すると、母親は低額治療を受けられる病院に、自宅から2時間以上かけて通った。
 厳しい状況に追い込まれた3人を救ったのは、支援団体の寄付や同級生家族らの援助だった。
 中学の校長は当時、「思いやりがあり人の話をよく聞く。クラスでも部活でも慕われ、中心的存在でムードメーカー。大学への進学を強く希望しており、日本で学ぶ機会を得られるよう強くお願いする」と記した在留許可を求める上申書を提出してくれた。
 周囲の善意に支えられながら長女は学校に通った。中学で学級委員を務め、高校に進学すると英検準1級を取得。夢見た留学は在留資格がないためあきらめたが「自分のような外国人でも起業し、同じような状況で苦しむ人々を救いたい」と昨年4月、経営を学ぶため、支援者の寄付に助けられ、大学に進んだ。

◆母のがん判明、長女は大学を自主退学

 しかし、半年後に母親が倒れ、ステージ3の進行性の卵巣がんが判明。病院からは「治療費は最低でも500万円」と言われた。
 悩んだ末、長女は誰にも相談せず、自主退学を決めた。「今は母を支え、働けるようになったらお金をためて、もう一度大学に行きたい」と、就労可能な在留特別許可を得たいと望む。
 一家を支援するNPO法人「北関東医療相談会」が寄付を募り、母親は7月に手術を受けられることになった。しかし、術後も抗がん剤治療で多額の費用がかかる。病院からは「公費での医療費負担がある在留特別許可を得てほしい」と言われているが、入管当局の許可はまだ出ていない。
 名古屋高裁では11日、不法残留で強制退去命令を受けた外国籍の家族5人のうち10代の姉妹2人について「送還されると日本と同じ教育課程を修了するには相当な困難がある」と、在留許可を与えるよう国に命じた。
 NPO法人「移住者と連帯する全国ネットワーク」の山岸素子事務局長は「仮放免の在留希望者は、かつて労働力不足の産業下で働き、日本社会を下支えした労働者と家族だが、医療や社会保障の対象から排除され、過酷な生活を強いられている」と指摘。
 「日本は子どもの権利条約の批准国として『子どもの最善の利益』と『家族の結合』を守る義務がある。親子に早期の在留資格を認めるべきだ」と求める。
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