<社説>リンゴ日報廃刊 言論の自由死なせるな

2021年6月25日 07時15分
 中国に批判的な論調を貫いてきた香港紙リンゴ日報=写真、共同=が事実上の廃刊に追い込まれた。民主化運動を後押ししてきた同紙の廃刊は、一九九七年の香港返還時に中国が国際公約した「一国二制度」をかなぐり捨て、「報道の自由」を消滅させたあしき象徴として歴史に残るであろう。
 中国は香港国家安全維持法(国安法)をフル活用し、同紙創業者や中国担当主筆、編集幹部らを逮捕。さらに、香港警察が同紙発行会社の資産を凍結するなどし、言論と資金両面の封殺により、強制的に同紙の口を封じたといえる。
 近年の香港抑圧により、多くの香港メディアが中国資本を受け入れ、親中的あるいは対中批判を抑制する論調にシフトした。リンゴ日報が目の敵にされたのは、独立資本を守り、香港紙で唯一国安法施行に対する反対などを鮮明にしてきたからである。
 中国共産党は、メディアを「共産党の喉と舌」と呼ぶ。気に入らない新聞社を強引につぶすような暴挙は、メディアを単なる宣伝機関であり言論機関ではないとする大陸流の考えを香港に持ち込んだ結果である。香港の自由を死なせることは断じて許されない。
 中国共産党は七月一日に党創建百周年を迎える。二〇一四年の雨傘運動に端を発した香港での反中的な動きが大陸での祝賀ムードに水を差さぬよう、習近平指導部はこの時期に厳しい言論弾圧に踏み切ったとみられる。
 雨傘運動のリーダーの一人で、今は国安法違反の罪に問われ服役している黄之鋒氏は一七年に訪日した際の記者会見で「香港人の権利は侵害され、中国の国際公約であるはずの『一国二制度』は『一国一・五制度』にされてしまった」と、香港の自治が失われていく状況に危機感をあらわにした。
 民主主義を支える言論の自由を奪われた香港は、黄氏の懸念よりさらに悪く、「一国一制度」に近づいてしまったといえる。
 中国は、同紙を一罰百戒的に廃刊に追い込むことで、香港の言論界や民主派勢力の沈黙を狙っている。国際社会は国安法撤廃を求める声を上げ続けたい。

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