<若者たちのSDGs>自然を大切に想う心を子どもたちに伝えたい

2021年6月25日 10時36分

3月14日(日)、さいたま市の農園「ファーム・インさぎ山」にて、親子科学実験教室がオンラインで開催されました。主催したのは、自然と共存できる社会を目指して活動を続ける学生団体「農かがく」。今回の特集は、同企画第2弾にも登場した「農かがく」による初のオンラインイベントの模様をお届けします。

◆「農かがく」 自然のふしぎ、農家の知恵を体感!

農×科学=農かがく。2008年より「自然と共存してきた農家を見直せば、
環境と共存できる科学が生まれるはず!」をコンセプトに、さいたま市の農園「ファーム・インさぎ山」を会場に、東京電機大学と同大学大学院の学生たちが講師となって、親子で楽しめる科学実験教室を定期的に開催している。


◆自然と科学のつながりを体感してほしい

科学は、元々は自然の中から生まれたもの。今、子どもたちは、パソコンやスマホなど最先端の科学技術に触れていますが、そのことを知らずに育つ子も多いのではないでしょうか。今回はオンラインでの開催ですが、自然豊かな農家さんで、科学に触れることの意義は大きいと思っています。農かがくを通じて、自然と科学のつながりをぜひ体感してもらいたいですね。

青柳裕子さん(農かがくOG/東京大学専門支援員)

◆野菜は浮く?沈む?

 青空の下、ファーム・インさぎ山には、農かがくのメンバーやOB・OGの社会人が集合。初のオンラインによる科学実験教室が始まった。一昨年までは対面で実験を行ってきたが、新型コロナウイルスの影響で一旦休止に。昨秋から、オンラインでの開催に向けて準備を重ねてきた。この日、実験の講師を担当した東京電機大学4年の石田やや香さんは「リモートで子どもたちにうまく伝えられるか不安だったが、OB・OGのアドバイスを受けながらリハーサルを繰り返し、この日を迎えた」と話す。
 実験教室には、約10名の子どもたちが自宅から参加。「今日は、水に浮く野菜と沈む野菜を調べる実験と、水に沈んだ野菜を浮かせる実験をするよ!」。石田先生が大きな声で呼びかけると、笑顔を見せる子どもたち。「キャベツと人参、水に入れるとどうなるかな?」。水槽に野菜を入れると、キャベツは浮いて、人参は沈んだ。予想が当たると「やったー!」とガッツポーズ。次にブロッコリーとじゃがいもを水に入れると、ブロッコリーの方が重いのにも関わらず浮き、じゃがいもは沈むという結果が出た。

◆農かがくが伝えたい、農家の知恵「塩水選」

 「今度は、同じ野菜を大きさや形を変えて水に入れたら、どうなるだろう?」。先生の問いかけに、多くの子どもは「浮き沈みの結果は変わる」と予想。しかし、小さく切った人参を水に入れると前の実験と同じ結果に。「みんなは畑で育つ野菜を見たことはある?土の上で育つ野菜は水に浮き、土の中で育つ野菜は水に沈むんだよ」。浮き沈みには法則があることを聞き、不思議そうな顔を浮かべる子どもたち。ここで前半の実験は終了となった。
 休憩時間には、OBが参戦!現在、北海道東部の標津町で酪農に携わる竹村光司さんが牛舎を撮った映像を使って牛の生態を教えてくれた。牛は好奇心旺盛で、5歳くらいの牛だと500〜700kgもの体重があること、胃袋が4つもあること……子どもたちは、迫力満点の牛の映像を食い入るように観ながら、オンラインならではのプログラムを楽しんだ。
 後半は、実験の種明かし。「『密度』という言葉を知ってる?モノの詰まり具合のことで、水よりも密度が小さい野菜は浮き、密度が大きいと沈むんだよ」。スカスカな断面のキャベツと身が詰まったジャガイモの断面を比べて、子どもたちは「密度」の意味を理解した様子だ。「今度は、塩水に野菜を入れるとどうなるかな?」。すると、沈むはずのじゃがいもが浮いてきた。この実験は、農かがくが伝えたい農家の知恵の一つである「塩水選(えんすいせん)」と同じ原理だ。
 ここで、ファーム・インさぎ山の萩原哲哉さんが登場。「私たち農家がお米を育てる際に種にするお米を『籾種(もみだね)』という。よい苗を育てるために、良質な籾種を使いたいので、塩水選という方法で、塩を入れて密度を大きくした塩水に沈む身のつまった籾種を選ぶんだ」。そう言って実演する萩原さん。子どもたちは、野菜と同じように浮き沈みする籾種をじっと観察した。密度、そして農家の知恵を学んだこの日の実験は無事終了。「楽しかった?」と先生が呼びかけると、みんな笑顔でポーズを決めてくれた。

◆自然と共存できる未来のために

農園のビニールハウスから実験を配信。

大満足の子供たち

 「自然と共存してきた農家の力を見直せば、自然と共存できる科学が生まれる」をスローガンに掲げる農かがく。その取り組みはSDGsにつながるものといえるが、学生たちに気負いはない。活動を続ける理由を聞くと「子どもたちに科学の楽しさを伝えたいし、私自身も純粋な気持ちで科学を楽しむ子どもたちの姿を見たいから」と石田さん。長年活動を見守ってきたOGの青柳裕子さんはこう話す。「農や自然に触れることで初めて、それらを大切にしようと思う心は育まれる。将来、子どもや学生が大人になって科学技術開発などに携わる際にこの心が根っこにあれば、環境と共存できる持続可能な開発となり、SDGsにつながるはず」。OB・OGなど社会人の参加によって、刺激を受け、想いを共有できる場にもなるだろう。農かがくの心は、受け継がれていく。初の試みを成功させた学生たちは晴れやかな笑顔で、「また新しい実験を考えたい」と次なる目標を語ってくれた。

農かがくのメンバー

◆参加者の感想

野菜が浮かんだり、沈んだりした実験が楽しかった!理科の実験は好きなので、おうちでもやろうと思いました。

野菜が浮いた塩水の実験はびっくりしました。理科の実験は学校でもまだやったことがなかったので、楽しかったです。

◆おうちで実験しよう! この野菜は浮く?沈む?

今回の農かがくで行った実験は、おうちでも楽しめます。
いろんな野菜でチャレンジしてみよう。
<用意するもの> 野菜が入る大きな容器(水槽、鍋など)・水・野菜・塩
①水に浮く野菜と沈む野菜を調べよう
たくさんの水を入れた大きな容器に、野菜を入れて浮き沈みを確かめる。
②水に沈んだ野菜を浮かせよう
水に沈んだ野菜を入れた水に塩を溶かしていく。
※塩が溶けにくく白く濁る場合は、少し時間を置くとおさまります。
<実験の原理>
 野菜の浮き沈みは「密度」で決まる。密度とは、大きさに対する重さ(質量)のことで、水よりも密度の小さいものは浮かび、大きいものは沈む。野菜の浮き沈みと生育環境には、地上で育つ野菜は水に浮き、地中で育つ野菜は水に沈むという関係がある。これは、野菜の進化の過程で、地上で育つ野菜は茎に負担がかからないように密度が小さく軽く、地中で育つ野菜は大雨で土が軟らかくなっても浮いて流されないように密度が大きくなったためと言われる。また、水に沈んだ密度の大きい野菜は、水に塩を加えて密度を野菜の密度よりも大きくすることで浮かせることができる。プールより海で泳ぐ方が浮きやすいのもこれと同じ原理。※野菜の浮き沈みの結果は、例外もある。
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企画・制作/東京新聞広告局

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