ペットを救うために働く「供血犬」に穏やかな暮らしを 八王子の英会話講師が引退後の飼い主を探す活動

2021年6月26日 12時15分
 けがや病気にかかった犬が治療する際、使用する血液を提供するため動物病院で飼われる犬を「供血犬」と呼ぶ。東京都八王子市の英会話講師ケリー・オコーナーさん(57)は、ペットを救うために働き続けてきた供血犬に、せめて引退後は穏やかに暮らしてもらおうと、飼い主を探す活動を続けている。雑種の雌犬「シロ」13歳の場合は。 (石原真樹)

 ▽供血犬 治療で使う血液を提供するために動物病院で飼われる犬。猫もいる。日本獣医輸血研究会によると、動物は人間のような血液バンクがないため、各病院は院内で動物を飼ったり、血液提供に協力してくれる飼い犬や猫をあらかじめ登録するドナー制度を設けたりして輸血に備える。ペットは小型犬が人気で、血液提供の条件に合う若い大型犬が少ない状況が続いている。犬は血液型が13種類以上あるとされ、シロは「DEA1.1+」型。犬種が違っても輸血はできるが、個々のケースで適合するか確認が必要。

病院の面会室で、野々村かおりさん(右)とオコーナーさんになでられ、気持ちよさそうなシロ=横浜市都筑区で

 オコーナーさんがシロに出合ったのは2017年。都内の動物病院にボランティアとして関わるようになり、供血犬として病院の地下室で飼われているのを見つけたのだった。窓のない部屋でシロを含め6匹が狭いケージに押し込められ、汚れきっていたという。院長や病院のスタッフに「なぜこんな飼育をするのか」と尋ねても「こちらで世話している」と答えるのみだったという。
 オコーナーさんは出勤時にケージを丁寧に掃除し、シロたちを散歩させた。さらに、病気や高齢で供血できなくなった4匹と、血液を提供するために小さな箱で飼われていた猫3匹を引き取り、飼い主を探したり自宅で介護したりした。
 心臓の病気のため病院がシロの引退を決め、新たな飼い主となったのが、京都市の野々村好弘さん(39)、かおりさん(46)夫婦。自宅で美容室を経営する2人は19年10月、オコーナーさんがフェイスブックに投稿したシロの写真に一目ぼれした。

野々村さんの子どもたちのベッドで寝るシロ=5月、京都市で(野々村かおりさん提供)

 「この子のためにできることをしたい」と家族として迎えた。穏やかでめったにほえないシロは店の看板犬として客にもかわいがられ、近くの鴨川べりを毎日散歩した。
 ただ、シロは病気でせき込むことがあり昨年秋に発作を起こしたため、野々村さんは手術を決意。シロは横浜市都筑区の「JASMINEどうぶつ総合医療センター」で5月末に手術を受けた。順調に回復して1週間で退院し、オコーナーさんの自宅でさらに1週間過ごした後、京都に帰り、今は野々村さん一家と静かに暮らしている。

◆「動物のドナー登録をもっと知って」

 オコーナーさんは、院内で大切に飼われている供血犬もいるとしつつ「他の犬のために8年ほど働いたシロに幸せになってほしい。シロを通じて、動物のドナー登録をもっと知ってほしい」と訴える。
 JASMINEでは血液提供用のドナーを募集し、今は、応じてくれた飼い主やセンターのスタッフが飼育する犬24匹と猫9匹が登録している。院内で飼う看板犬「くま」も緊急時に備えている。
 シロの手術ではドナー登録した犬から輸血できるよう準備したが、結果的に輸血をせずに手術を終えた。シロを担当したJASMINEの新居康行獣医師は「日々手術をできるのはドナーのおかげ。今後も協力をお願いしたい」と呼び掛けている。

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