フルタイムでは働けない…「潜在看護師」の復帰進まず

2021年6月27日 06時00分
 新型コロナウイルスワクチンの打ち手として期待されている「潜在看護師」の現場復帰がなかなか進んでいない。希望者は増えている一方で、求人数が少なかったり、勤務時間帯が就業可能な時間とかみ合わなかったりしているためだ。潜在看護師が働きやすい柔軟な勤務体制づくりという課題が浮かび上がる。(柚木まり)

◆都の接種業務、派遣会社に大半委託

 「質の高い潜在看護師を派遣しようと取り組んでいるが、思うように進んでいないのが現状だ」
 東京都看護協会の山元恵子会長は5月末、小池百合子都知事から築地市場跡地で行う大規模接種に協力を求められた。1日5000人の接種には、毎日フルタイムで100人分の看護師を要する。協会で筋肉注射の実技研修とワクチン接種を受けた潜在看護師約400人が求人に備えた。

潜在看護師向けの研修道具を使って、ワクチン接種の方法を説明する東京都看護協会の山元恵子会長=東京都新宿区の都看護協会で

 結局、都は委託した人材派遣会社で必要な看護師の大部分を確保。協会が運営し、離職中の看護師の復職を支援する無料職業紹介所「ナースセンター」への求人は80人にとどまった。都感染症対策部は、派遣会社への依頼を「スピード感ある打ち手確保を優先したため」と説明する。
 約400人の潜在看護師のうち、働く意欲がありながらその後も求人を待つ人たちは少なくない。

◆求人とミスマッチ「多様な雇用形態必要」

 潜在看護師は全国に約70万人いると推計される。コロナワクチンの接種は筋肉注射で、採血や静脈注射と比べてブランクがあっても習得しやすい。就業希望者は増加傾向にある。
 日本看護協会によると、5月中旬までに実技研修に全国で4000人以上が参加した。4月12日~今月6日の間、各都道府県ごとにあるナースセンターに接種業務の求人が4275人あったのに対し、就業者は3分の1強の1480人にとどまった。
 就業できない原因は、求人内容と潜在看護師の希望のミスマッチにある。
 潜在看護師のほとんどが女性で、出産や育児、介護などを理由に離職しているという。フルタイムの仕事には対応できないことも予測でき、同協会は「曜日や時間帯を選択できる多様な雇用形態が、求人を希望者に結び付けるのではないか」と指摘する。
 日本看護協会には、市町村から「感染対策の業務過多で、(接種業務の)雇用手続きに時間が割けない」との声も寄せられている。

◆ナースセンターの就業支援後押し

 ミスマッチを減らそうと、厚生労働省は今月、感染対策に追われる市町村に代わり、都道府県が窓口となり人材確保に努めるよう通知。ナースセンターが潜在看護師の適性に合わせた就業支援を行うことも求めた。同省はセンターに登録、研修を受けて接種業務に就いた潜在看護師に「就職準備金」として3万円の支給も決定し、円滑な打ち手確保につなげたい考えだ。

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