宇宙葬 遺骨打ち上げ 最後は「流れ星」に… 12月にも第1弾

2021年6月28日 07時08分

宇宙へ打ち上げられる遺骨を納めるカプセルのサンプルを持ち宇宙葬をPRする葛西智子さん

 人は亡くなったら、お星さまになる−。小さいころに聞いた話を、練馬区で葬儀プロデュース会社を経営する葛西智子さん(60)が、「宇宙葬」として実現させようとしている。米国の宇宙開発企業と直接契約し、早ければ12月にも、遺骨を乗せた人工衛星を宇宙へと発射させる計画だ。
 宇宙葬は、ロケットや宇宙船の開発、打ち上げを行う米スペースX社の商業用ロケット「ファルコン9」を使う。葬儀社が直接契約し、人間1人分の遺骨全てをパウダー状にして宇宙に飛ばせるのが新しい点だ。専用のアルミ製カプセルに入れた遺骨はロケットで上空へ。地球の周りを数年回った後、大気圏に突入。流れ星になって燃え尽きるので、宇宙ごみにはならないという。

※衛星の形状、軌道などは実際と異なります

 葛西さんは幼いころ、親から「亡くなったら星になる」と聞かされていたのに、曽祖母が墓に葬られる様子に違和感を抱いた。約30年、葬儀業界で樹木葬や海洋葬を手掛け、宇宙葬を思い付いた。4年前、株式会社「SPACE NTK」(茨城県つくば市)を起業した。
 知り合いのつてで宇宙業界に人脈を広げ、米国の宇宙ロケット発射基地を回るツアーに参加。3年前には国際宇宙開発会議で、宇宙葬の夢を英語でスピーチする機会を得て、スペースX社とつながり、昨秋、契約を交わした。
 葛西さんの人生もチャレンジの連続。高校卒業後すぐに結婚、出産。実家の近くに住みながら保険会社や芸能プロダクションでダンスを教える仕事などをした。葬儀業界に入ったのは、たまたま夕方だけの「セレモニーレディ募集」の求人広告を見つけたから。
 ここで生きたのが、小中高校と仏教系の私立学校で学んだ経験。お経を暗記していた葛西さんは、人数や時間に応じて焼香をうまく案内できた。やがてアルバイトから正社員へ。大型葬や社葬が多かった当時、葬儀の司会は男性と決まっていたが、「母のことは女性に語ってほしい」との要望を受け、司会業も任されるようになった。
 43歳で独立。多い時で年間1000件を超える葬儀をプロデュースした。「人は亡くなるとモノ扱いになるのが嫌だった。最後まで亡くなった方の尊厳を大事にしたい」と話す。
 コロナ禍の今は、家族葬が9割を占めるまでになった。故人の思いに寄り添えるからこそ、宇宙葬も勧めたいという。「空を見上げれば毎晩、故人を思うことができるんです」
 日本では2018年に宇宙活動法が施行され、人工衛星の管理やロケットの打ち上げの許可制度が整備された。内閣府宇宙開発戦略推進事務局の資料によると、40年の世界の宇宙産業の市場規模は1兆ドル(110兆円)とも見込まれる。ただし同法は、国内で管理している衛星が対象。宇宙葬で打ち上げるロケットは米国の許可を得るという。
 米ヴァージン・ギャラクティック社の宇宙旅行に申し込み、来年にも宇宙へ旅立つ予定の日本初の“サラリーマン宇宙旅行者”稲波紀明さん(44)も宇宙葬に注目している。「宇宙が身近になり、何かを打ち上げたいというニーズは高まっている。生きている時に行けなくても、亡くなった後に自分のDNAを宇宙に、というのは選択肢になりうる」
 12月に打ち上げ予定のロケットには、100人分の遺骨を搭載したいという。価格は1人分の遺骨が入るカプセルで1000万円、ペットの骨や遺骨の一部を入れる最小のカプセルは50万円(いずれも税別)。8月末まで申し込みを受け付けている。

遺骨を納めるカプセルのサンプル

 民間人も宇宙に行ける時代はもう、そこまで来ている。「宇宙での生前葬や、遺族が遺骨と一緒に宇宙を旅する『宇宙遺骨旅行』もしたい」と、葛西さんの夢は広がる。
 文・奥野斐/写真・嶋邦夫
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