政治問題化する米国のワクチン接種 共和党員の意欲上げるには有効性PRよりトランプ氏?<新型コロナ>

2021年6月28日 17時00分
 新型コロナウイルスのワクチン接種に力を入れてきた米国の接種ペースが鈍っている。バイデン大統領は「7月4日の独立記念日までに成人の70%が少なくとも1回は接種する」という目標を掲げていたが、6月22日時点で65・5%にとどまり、政権幹部は断念を表明。接種を呼び掛ける民主党政権に共和党支持層が反発する構図で、政治的な分断がワクチン接種にも波及している。(ワシントン・吉田通夫)

◆バイデン氏、接種を重視も…

 「デルタ株(インドで確認された変異株)の出現は深刻な問題。身を守る最善の方法がワクチン接種だ」。バイデン氏は24日、南部ノースカロライナ州の演説で呼び掛けた。外遊先での記者会見など、機会をとらえてはワクチン接種を促している。
 1月に発足したバイデン政権はワクチン接種を重視し、接種会場を増やすなど体制を整備。接種が加速するにつれて新規感染者数は減り、米疾病対策センター(CDC)によると1月上旬の1日平均25万人超をピークに、6月中旬からは1万人程度に収まっている。各地で飲食店の営業など経済活動が再び始まり、日常生活が戻りつつある。

◆高額賞金や銃の宝くじも

米カリフォルニア州サクラメントで4日、新型コロナウイルスワクチン接種の促進策として、賞金が当たるくじの抽選をする同州知事=サクラメント・ビー紙提供、AP

 しかし、ワクチンの接種回数は4月上旬から減少に転じ、ピーク時の1日当たり300万回超から、最近は50万回を下回っている。政府は危機感を募らせ、接種した人に高額の賞金が当たる宝くじを配布するなどさまざまな「ご褒美」を用意している。
 中でも、共和党支持者が多い米南部ウェストバージニア州は、狩猟用ライフルや散弾銃などが当たる宝くじを発案。ワクチンに反発する共和党支持層に対し、銃を保有したがる心情に訴えかける戦略だ。

◆根強い反発が背景に

 ここまでする背景には、共和党支持層にワクチンへの反発が根強く、接種のブレーキになっている現状がある。
 スタンフォード大医学部のケビン・シュルマン教授は「残念ながら、米国ではワクチンが科学的ではなく政治的な問題になってしまった」と声を落とす。共和党のトランプ前大統領がワクチン開発を促した際、効果に懐疑的だったのは民主党支持層だったが、バイデン政権が発足して接種を呼び掛けたことで逆転したという。
 さらに、共和党支持者を対象にした同大の研究によると、トランプ前大統領と共和党議員が接種を呼び掛けるビデオを見たグループでは接種すると答えた人が増加。逆に、バイデン氏と民主党議員がワクチンの有効性を訴えるビデオを見たグループは接種への意欲が後退した。
 バイデン氏が接種を呼び掛けるほど、共和党支持者はかたくなに拒むという悪循環。米公共ラジオ(NPR)などの5月の世論調査によると、依然として共和党支持者の41%が接種しない予定と答えた。

◆デルタ株の拡散を懸念

 米有力紙ワシントン・ポストによると、ワクチン接種者の割合が低い地域では、共和党支持者が多い南部地域を中心に、感染者がわずかながら増加する兆候があるという。特に、感染力が強いデルタ株の拡散が懸念されている。トランプ前政権から引き続き医療顧問トップを務めるファウチ国立アレルギー感染症研究所長は22日の会見で「ワクチンはデルタ株にも有効なので、接種して感染を防ごう」と訴えた。
 シュルマン氏は「共和党の知事や議員らオピニオンリーダーにもワクチン接種は必要だと考えている人はおり、バイデン政権は協力して共和党員に働き掛けることができるはずだ」と指摘。「経済活動の再開による利益を強調するなど政治問題にすることを避けるための工夫も必要だろう」と語った。

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