<社説>ミャンマー選手 日本は難民認定せよ

2021年6月29日 06時52分
 勇気を振り絞って帰国を拒み、日本に残ったサッカー・ワールドカップ(W杯)ミャンマー代表ピエ・リヤン・アウン選手=写真。日本政府は彼の望み通り早期に難民認定し、国軍に弾圧される市民の支援を強化する契機にしてほしい。
 二月一日の軍事クーデターから間もなく五カ月。八百人を超す市民が国軍に殺害され、数千人が拘束された。民主化指導者のアウン・サン・スー・チー氏も拘束の上刑事裁判が始まり「軍政」が既成事実化されようとしている。
 祖国では民主化を応援してきた同選手は五月に来日し、日本戦で「WE NEED JUSTICE(私たちには正義が必要)」と記した三本指を掲げた。「国軍に派遣された」との批判もあったが、W杯予選という国際社会に訴えるタイミングに立場を鮮明にした。同時に「帰国したら自分は殺されるかもしれない」、しかし逆に「日本に残ればミャンマーの家族や知人らが迫害されないか」という大きな不安にさいなまれた。
 今月中旬にチームが帰国する際離脱の試みに三回失敗。そのたびに「帰国」か「残留」かで心は激しく揺れ、出国審査のカウンターで「残留」を決めたという。自分や家族らの運命、ひいてはミャンマー市民の行く末にも関わる問題への葛藤と決断だったといえる。
 先週、日本に難民認定を申請した。認定されれば、定住者の在留資格が与えられ、国民健康保険加入を申請できる。自治体を通じた福祉支援も受けられる。
 だが、日本は“難民鎖国”とも言われる。難民認定率は二〇一九年で米国29・6%、カナダ55・7%、フランス18・5%に対して日本はわずか0・4%。ミャンマー人に限れば、日本では過去三年間に一人も難民認定されていない。
 クーデター後の国軍への姿勢で失望を買う日本政府は五月、日本在留の継続を望むミャンマー出身者に在留延長を認める方針を示した。「緊急避難的な措置」というが十分とは言えまい。
 まずは、重い決断をした同選手を速やかに難民認定し、彼の家族らの安全が脅かされることのないよう、そして市民への暴力を直ちにやめるよう、国軍の説得に力を尽くすことを強く望みたい。

関連キーワード


おすすめ情報