無言の昼食 彩る校内放送 「黙食」導入の宮代高校 「先生たちの高校時代」が好評

2021年6月29日 07時44分

蓮見仁教頭(手前)のインタビューを収録する谷川さん(左から2人目)ら放送部員

 新型コロナウイルス感染防止のため、学校では昼食時、全員が前を向き、会話せずに食事をする「黙食(もくしょく)」が取り入れられている。そんな味気ない昼のひとときを楽しく過ごしてもらおうと、宮代町の宮代高校放送部は、昼に流す校内放送の制作に力を入れている。(寺本康弘)
 六月中旬、ある日の昼休み。生徒らが机の上に弁当を広げ始めると、教室のスピーカーから明るい声が流れてきた。「さあ、やってまいりました。宮代高校放送局です。この番組は先生と生徒の参加型ラジオです」
 この日の司会進行役は二年生の谷川楓(かえで)さん(16)。インタビュー相手の同校の若手男性教諭に、生徒から寄せられた「先生はなぜそんなに格好良いんですか」「高校の時の恋愛事情を教えてください」など教室では聞けなさそうな質問をぶつけた。いつもは「厳しそうな先生」という印象を持たれている教諭は、高校時代に部活のマネジャーと付き合い、失恋したエピソードを赤裸々に告白。「これからの人生の教訓にしてくれたら」と笑って話した。

昼の放送を聞きながら「黙食」する生徒ら=いずれも宮代高校で

 教諭が好きな楽曲も交えて約二十五分。放送の間、教室で生徒らは静かに前を向いて食事をしたり、参考書を読んだりと、一見すると放送を聴いていなさそう。ただ、これも「黙食」ゆえに食事中は反応しづらいためで、一年生の女子生徒は「恋愛エピソードがおもしろかった。放送があった日は、ご飯を食べ終わった後に友達と放送内容で盛り上がる」と好意的だ。
 以前は音楽をかけるだけだったが、コロナ禍で様変わりした昼食時間に楽しみを提供しようと、新年度から新たな取り組みを始めた。最初は占いや心理テストを流してみたが、反応がいまひとつ。試行錯誤の結果、先生に高校時代のエピソードを中心に語ってもらうスタイルにたどり着いた。
 これまでは主に自分たちと世代が近い若手の先生や、今年赴任した先生らが登場。質問する内容を事前に募集するなど、生徒に関心を持ってもらう工夫もする。九人の放送部員が手分けしてインタビューし、編集作業も自分たちでして、完成した音源を放送当日に流している。
 収録や編集に時間がかかる上、テスト期間など昼食がない日もあり、四月からの放送回数は十数回。今後も毎日は難しいが、放送は続けていく。部長で三年生の菅野愛未(すがのまなみ)さん(17)は「一年生の時はお昼の時間にみんなでワイワイしていたので、昼食時にしゃべれないのは寂しいし、つまんない。みんなに心の中で『フフッ』と笑ってもらえる放送を作っていきたい」と意気込んでいる。

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