現場任せのオリパラ教育 観戦中止、予算削減…レガシーは残せるか

2021年6月30日 12時00分
 東京五輪・パラリンピックについて、東京都議選では中止を訴えたり公約に掲げるのを避けたりする党も目立つ。都教委が力を入れてきた「オリンピック・パラリンピック教育」の集大成と位置付ける学校連携観戦も、新型コロナウイルス感染拡大や熱中症への懸念で中止する自治体も多い。続けてきたオリパラ教育はレガシー(遺産)として何を残せるのか、現場任せの状況が続く。(神谷円香)

5年生の学級活動で、オリンピック競技をクイズを通じて学ぶ児童たち=江戸川区立大杉小学校で

 24日、江戸川区立大杉小学校。5年生のクラスは学級活動の時間に、五輪の競技に関するクイズ大会を開いた。6グループがそれぞれ違う競技のルールや歴史を調べ、考えたクイズを出し合った。
 「アーチェリーの的までの距離は」「スポーツクライミングで手に付ける粉は何」。正解の選択肢を選んだ子どもたちは「やった」と大声を出したくなるのをマスクの下でこらえ、にこっと笑い拍手をする。大杉小では学年に応じ、五輪・パラをさまざまな形で学んできた。
 ボランティアマインド、障害者理解、スポーツ志向、日本人としての自覚と誇り、豊かな国際感覚―。都教委は2016年度から推進するオリパラ教育でこの5つを掲げる。都内の公立学校2300校には毎年30万円が配られ、各校は競技の体験や選手との触れ合いなどを進めてきた。
 担当者は掲げた5つを「今後もレガシーとして残していきたい」と話す。ただ、大会の1年延期で昨年度と本年度は予算が減り、来年度以降はどうなるか分からない。
 順天堂大スポーツ健康科学部の渡正准教授(スポーツ社会学)はコロナ禍前の昨春、オリパラ教育を実施する都と千葉県の学校に実態調査を実施した。取り組むきっかけは「どの学校でもやらなきゃいけないから」が目立つものの、オリパラ教育の意義自体は理解されていたとする。
 渡さんは「五輪なら平和、パラリンピックは多様性や共生社会の学びと、オリパラ教育の理念への否定は学校現場にはないと思う。格差など社会課題への気づきも大事」と話す。一方、具体的な方法は現場任せの中、授業時間をやりくりしての実践は負担があるのも事実。「ここに聞けば何とかなるという相談窓口の設置などが必要」と、都からの予算も含めたオリパラ教育への制度的な支援を期待する。
 大杉小の浅野努校長は、夏休み中の東京五輪で都市ボランティアをする。「管理職自らボランティアを」と考え、コロナ禍で迷ったが「自ら体験しなければ分からないことがたくさんある」と参加を決めた。ただ、児童を連れて行くパラリンピック観戦は区教委が実施するか未定だ。
 「観戦の是非だけが話題になるのはもったいない」と考える。「お金がなくても、いろんな本やノウハウは残っている。外国料理の給食を今も出している。大会が終わっても取り組みは続けたい」

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