空き家も人生も再生 住み込みながらリノベーション 国分寺のベンチャーが就労支援

2021年7月1日 07時06分

改修作業をする甲斐隆之さん(右)ら

 空き家は多いのに、住む家のない人がいる問題の解決を目指します−。家や仕事のない人に空き家に住み込んでもらい、改修を手伝ってもらう事業に、国分寺市のベンチャー企業が取り組んでいる。その物件第一号として、同市内の一軒家がシェアハウスに改修され、七月一日から入居が始まる。
 事業を手掛けるのは、二〇二〇年に設立された「Renovate Japan(リノベートジャパン)」。代表の甲斐隆之さん(27)が発案した。
 仕組みはこうだ。同社が空き家の持ち主から家を借りるか、購入し、運営メンバーを中心にDIY(日曜大工)で、住める状態まで手を入れる。その後、仕事や住む場所に困っている人にバイト付きシェルターとして利用してもらい、さらに改修を進める。
 家賃は改修への参加で払う。週に三時間働けば家賃はかからない。それ以上働けば時給千二百円を稼ぐことができる。家と仕事を一時的に確保することで、次のステップに進むための土台ができ、就労サポートといった支援につなげることができる。空き家の改修後は本人が希望すれば、家賃を払ってそのままシェアハウスに住み続けることもできる。
 同社は一軒目として、木造二階建て築五十四年の空き家を四月に借りた。初期費用はクラウドファンディングで集めた。延べ床面積百五十平方メートルの六LDKで、六人が住める。改修後の家賃は家具付き、光熱費込みで四万五千円〜。入居者は既に四人決まっている。

シェアハウスに生まれ変わった築54年の空き家。1日に入居が始まる

 改修を手伝う被支援者は「リノベーター」と呼ばれる。最初のリノベーターは十九歳。母親がうつ病で家事や親の世話に追われ、自身も精神疾患になった。行く当てなく家を飛び出し、体調を崩して救急車で運ばれ、別のシェルターに入っていたところ、支援者の紹介でリノベーターになった。

完成したシェアハウスの一室

 一軒目のシェアハウスに住み込んで壁のペンキ塗りや床張りなどの改修作業をしながら大学に通った。七月一日以降はこの家から「卒業」するが、同社インターンとして二軒目以降の改修に携わる予定だ。「家が住みやすくきれいになっていくのは達成感があった。リノベートジャパンの人たちが好きなので、これからも関わりたい。私みたいな人がいたら場所を提供できるお手伝いがしたい」と話す。
 事業を始めた甲斐さん自身も、豊かな幼少期ではなかった。六歳で父親を亡くし、遺族年金など社会のセーフティーネットに支えられて母子家庭で育った。努力して大学に進んだことを誇りに思っていたが、大学で貧困問題を学んで「努力ができる環境があったからだ」と気付いた。

「収益も見込める」と事業について説明する甲斐さん

 卒業後は、公共政策コンサルタントとして政策からのアプローチで貧困問題に取り組んだ。そこで今回の仕組みを思い付き、民間から問題を解決しようと起業を決意した。「リノベーターさんに『救われた』と言ってもらえ、始めてよかったと思った。家賃収入で収益も見込めるので、まねしてくれる団体が増え、派生していってほしい」と期待する。
 事業運営メンバーの一人、吉田佳織さん(27)は「リノベーター一人一人の生き方をきちんと考えたい。マイナスからスタート地点に立って前に進めるようにしたい」と語った。
 文と写真・竹谷直子
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