【評伝】前経団連会長・中西宏明氏 就活ルール、原発…自分の言葉で語る経済人 会見で事務方が大慌てしたことも

2021年7月1日 21時17分
取材に答える中西宏明経団連会長(当時)=2019年4月

取材に答える中西宏明経団連会長(当時)=2019年4月

 経団連会長時代に取材した中西宏明氏は、正しいと思ったことを率直に自分の言葉で語る度量のある経済人だった。
 日立から初めて経団連会長に就任したのが2018年5月。その年の9月3日の会見で、採用活動の解禁時期など就職活動ルール(指針)を「終身雇用や一括採用などが時代の変化で見直される中、指針は廃止してもいい」と述べた。
 経団連として機関決定する前の突然の意見表明だった。びっくりしたのは事務方。大慌てで「個人的な考え」と断るようメモを差し入れていた。だが、本人は意に介する様子もなく最終的に指針廃止も「有言実行」した。
 世論の注目を集めるエネルギー政策でも臆さず、19年の年頭会見で「国民が反対するもの(原子力発電所)を、エネルギー業者や電機設備を提供する日立などが無理やりつくるのは民主国家ではない。国民が反対するものをつくるにはどうしたらいいのか。真剣に一般公開の討論をするべきだ」と強調。この発言は反響を呼び、実現はしなかったが、脱原発を主張する小泉純一郎元首相らから討論も申し込まれた。
 会見のみならず記者との膝詰めの懇談でもその口ぶりは変わらなかった。対中国などの国際問題でアドバイスを受けたことは思い出深く、内密のはずの自身の入院先をあっけらかんと明かしたこともあった。若いころから登山と料理が趣味で家族思い。19年9月にリンパ腫が1度回復して退院後、「自宅の庭にチューリップの球根を植えた。咲くのが楽しみ」と笑顔で語った姿が印象的だった。(中沢幸彦)

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