日銀短観、中小企業の低迷続く…五輪効果も期待薄 大企業との格差鮮明に

2021年7月2日 06時00分
 日銀が1日発表した6月の企業短期経済観測調査(短観)の業況判断指数(DI)は、海外経済の回復の恩恵を受けた大企業と、飲食や宿泊を中心に低迷が続く中小企業との格差を鮮明にした。無観客開催の可能性もある東京五輪・パラリンピックの経済効果もそれほど期待できず、中小の回復はさらに遅れる懸念がある。(嶋村光希子)

客のいない店内で苦境を語る「たんと③」オーナーの宮森武史さん=東京都新宿区歌舞伎町で

◆「協力金だけでは賄えない」

 「借り入れは1000万円以上に膨らんで毎日が自転車操業だ」。東京・歌舞伎町の居酒屋「たんと③」を経営する宮森武史さん(41)は、客1人いない夕暮れの店内でため息をついた。
 深夜営業の再開のメドが立たず、売り上げの低迷が続く。ビール100円を売りにするだけに「(東京都による時短の)協力金だけではとても賄えない」状況だ。
 6月短観では大企業の宿泊・飲食サービスのDIが7ポイント改善したのに対して、中小企業はほぼ横ばいの1ポイント上昇にとどまった。協力要請に応じず深夜に店を開けて繁盛する店を見ると、宮森さんは「店を開けたい」という気持ちも生じるが、要請に「従うしかない」と思い直すという。葛藤の日々だ。

◆工夫して耐え忍ぶしかない

 先行きの予想では「横ばい」とみる大企業(全業種)に対し、2ポイント悪化となった中小企業(同)の方がより悲観的だ。6月短観が発表されたこの日、菅義偉首相は東京五輪・パラが無観客開催になる可能性に言及。「観戦ツアーのパンフレットなど、印刷物の注文を待っていたが全くだめそうだ」。千代田区の印刷会社会長(70)は肩を落とした。
 「五輪の観戦客に期待していたのに…」。1日発表された路線価が大幅に下落した浅草で、2階建ての屋根なし観光バスを走らせる平成エンタープライズ(埼玉県志木市)の担当者も懸念を漏らした。コロナ禍でバスツアーの利用客が平時の9割減となる月もあるほど経営は苦しい。7月からは、ワクチン接種者を対象に運賃から1000円を割り引くサービスを始めるなど工夫を凝らし、耐え忍ぶしかないのが実情だという。

◆仕入れ価格上昇でさらに打撃も

 国内経済への不安材料はほかにもある。海外経済が回復することによって、原材料価格が上昇していることだ。実際、今回の短観で景況感の回復傾向がみられた製造業では、仕入れ価格が「上昇」と答えた企業から「下落」と回答した企業を差し引いた指数が大企業、中小ともに14ポイント高くなった。
 仕入れ価格の上昇が続けば、経営体力に余裕がない中小にとってさらなる打撃になる。東京都品川区の自動車部品会社の社長は「仕入れ価格が高騰すれば原材料の入手が困難になる」と新たな不安を隠せない。
 第一生命経済研究所の熊野英生氏は「大企業は、ワクチン効果で景気が回復した海外への輸出増で恩恵を直接受けられるが、海外取引が少ない中小では、その恩恵が小さい」と分析。その上で「体力が弱い中小企業の景気回復は、ワクチンの効果で感染者数をいかに抑えられるかにかかっている」とみる。

関連キーワード


おすすめ情報

経済の新着

記事一覧