<新かぶき彩時記>すだれの効果 人も場面も引き立てる

2021年7月2日 07時39分
 涼しげなイメージのすだれ。細い竹などを糸で編みつなぎ、日よけと目隠しを兼ねています。時代物では御簾(みす)、世話物では「伊予すだれ」という名で、芝居の進行に合わせて効果的に使われます。
 「一條大蔵譚(いちじょうおおくらものがたり)」では、御簾が上がると、キャラが様変わりした主人公が現れる演出で効果を発揮。他にも御簾の上げ下ろしで場面が切り替わる映画のカット割(わり)のような役目も担います。
 そして、伊予すだれと言えば屋形船。川遊びの場面で、船のすだれの陰から主要人物が顔をのぞかせる演出も効果的です。「髪結新三(かみゆいしんざ)」の効果音で唄われる「吹けよ川風 上がれよすだれ 中の小唄の主見たや」も、風流さと目隠しの効能を実感する詞章です。
 「桜姫東文章(さくらひめあずまぶんしょう)」草庵の場での使われ方も大変印象的。主人公の桜姫が、恋した無頼漢の権助と再会して庵の中で抱き合うのですが、二人が寄り添うとすだれが下ります。中の二人の色事を、局(つぼね)の長浦と僧の残月が、すだれの隙間からのぞき見て驚き、興奮する演出は観客の想像力を刺激します。
 この伊予すだれは着物の柄にもなっています。「伊予染」と呼ばれるもので、重なったすだれが作るモアレ効果を波のように表現。独特の柔らかな雰囲気は「義経千本桜(よしつねせんぼんざくら) すし屋」の弥助のような若い優男のアイコンにふさわしいものです。 (イラストレーター・辻和子)

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