英国でコロナ感染が約10倍に再拡大 ワクチン接種遅れの若者中心に「デルタ株」流行

2021年7月2日 18時16分
 新型コロナウイルス禍を抑えつつあった英国が、感染再拡大に苦しんでいる。1日当たりの新規感染者は1カ月半前の10倍ほどに急増。外出規制の緩和に加え、感染力が強い「デルタ株」(インドで最初に確認された変異株)が、ワクチンの接種率が低い若者を中心に一気に広がったためだ。(ロンドン・藤沢有哉、写真も)

デルタ 爆発的に感染が拡大したインドで見つかった新型コロナウイルスの変異株。感染力が強く、世界保健機関(WHO)が英国(アルファ)株、南アフリカ(ベータ)株、ブラジル(ガンマ)株に次いで4番目に「懸念される変異株」へ指定した。英国や日本でも感染者が確認された。「デルタプラス」と呼ばれる新たなタイプも見つかっている。(共同)

◆終わりの見えない不安

 「コロナ禍には終わりがないのかって気がめいる。もしロックダウン(都市封鎖)に戻れば、耐えられる自信がない」

英ロンドンのサッカー競技場にワクチン接種会場が特設され、行列をつくる若者たち=6月25日、藤沢有哉撮影

 6月下旬、ワクチン接種の大規模会場に特設されたロンドン中心部にあるサッカー競技場。近くに住む医療関連従業員ポリー・スコットさん(22)は、1回目のワクチン接種を終えてホッとしつつ、将来への不安を口にした。
 一緒に接種を受けた友人のパブ店員クララ・ボーデンさん(22)は、2回の感染経験があり、一時は医療装置を使いながら療養した。「街に人が戻ったから覚悟はしてたけど、ここまで感染者が増えるなんて…」と漏らした。

◆デルタ株は若年層の脅威に

 英オックスフォード大のジェームス・ネースミス教授(構造生物学)は「デルタ株は英国に比較的早い時期に流入していた。感染力が非常に強く、外出制限の大幅緩和とともに広がった」と分析する。
 イングランド公衆衛生庁(PHE)によると、デルタ株の感染力は、昨年冬から英国で猛威を振るった「アルファ株」の1・6倍。旧植民地のインドと人の往来が活発な英国では、3月下旬に国内で確認された。
 1月上旬のピーク時には6万8000人を超えた英国の1日当たりの新規感染者数は、5月中旬には2500人前後にまで減少していた。しかしこの時期に飲食店の屋内営業解禁や娯楽施設の営業再開といった規制緩和とともに感染者数は反転、6月末には2万6000人余を記録した。
 デルタ株の脅威にさらされているのは主に若者層で、英政府の6月下旬の統計では新規感染者の約7割を35歳未満が占める。英国では18歳以上の成人の6割超が2回を完了したが、順番が遅い35歳未満は未接種の人が多い。

◆ワクチンがなければロックダウン不可避

 ただ、ワクチンが重症化を防ぐ効果はデルタ株にも健在だ。PHEによると、入院に至る重症化を1回接種で8割弱、全2回では9割超防ぐ。実際、コロナによる英国の入院患者は5月中旬の1000人前後から700人ほどの増加にとどまる。
 このため英政府は、大規模会場の特設などで若者層への接種を加速しつつ、コロナ規制をほぼ撤廃する予定の7月19日までに成人の3分の2に2回接種を完了させる方針。変異株への効果をより高めるため、3回目の接種実施も検討している。
 ネースミス教授は「ワクチン接種の普及がなければ、英国は厳格な外出規制へ逆戻りだっただろう」と指摘し「デルタ株はやがて世界中に広がる。ワクチン接種率が低い国はロックダウンなしに封じ込められない恐れがある」と分析した。

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