「虎が雨」とは陰暦五月二十八日に降る雨をいう。いうまでもな…

2021年7月4日 07時20分
 「虎が雨」とは陰暦五月二十八日に降る雨をいう。いうまでもなく、鎌倉時代の曽我兄弟のあだ討ちに由来する▼伊豆地方を領地にしていた父親を殺された曽我兄弟はかたきを見事、討ち果たすものの、兄の十郎祐成(じゅうろうすけなり)も敵の刃(やいば)に命を落とす。これが五月二十八日のことで以来、この日に降る雨を祐成の愛した遊女、虎御前が流す涙と重ね「虎が雨」と呼ぶようになった▼虎御前よ、この記録的な大雨はあまりに無情ではないか。陰暦のその日は今年は七月七日に当たるというから、正確には「虎が雨」とは呼べないが、静岡県熱海市での大雨による土砂崩れに虎御前に八つ当たりしたくなる。複数の住宅が流され、大勢の人の安否が分かっていない。現地が心配である▼発生直後の土石流の映像に思わず息をのむ。山の斜面から土砂や木々を含んだ猛スピードの黒い流れが建物や電柱をなぎ倒して下っていく。これでは人の足で走って逃げるのはおよそ難しいだろう▼現地周辺ではここ数日の間に平年の七月一カ月間に降る量を超える雨があったという。長く降り続いた雨が山の斜面に浸透し、土砂崩れを起こしたか。観光地としてなじみある熱海が勾配のきつい場所だったことを思い出し、青ざめる▼雨の季節はなお続く。人は自然災害にあだ討ちも、歯向かうこともできない。できるのは備え、逃げること。最大の警戒を続けたい。

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