「五輪無観客論」与党内で強まる 都議選 都民ファ・共産・立民・ネットで議席過半数に

2021年7月5日 19時52分
 4日投開票された東京都議選(定数127)では、東京五輪・パラリンピックの中止や延期、無観客開催など、大会のあり方を見直すよう訴えた勢力の獲得議席が過半数に達した。後手後手の印象が強い新型コロナ対策や、五輪開催に突き進む菅政権の姿勢への不満が自民党苦戦の原因とも指摘されており、与党内でも無観客論が強まりつつある。(清水俊介)

◆平静装う首相、踏み込む公明

 菅義偉首相は5日、都議選の結果が五輪の観客問題に与える影響を記者団に問われ「(政府や大会組織委員会などの)5者協議の中で最終的に決める。選挙の結果にかかわらず」と平静を装った。だが、公明党の山口那津男代表は同日夜のBSテレ東番組で「無観客をベースにした方が良い。五輪を機に新型コロナ感染が広がれば台無しになる」と踏み込んだ。
 都議選で自民、公明の国政与党が五輪の争点化を避けたのに対し、31議席を獲得した都民ファーストの会は公約に「開催の場合は無観客」と明記。19議席の共産党は「中止をただちに決断」することを求め、15議席の立憲民主党は「感染拡大の懸念がなくならなければ延期または中止」を掲げた。
 この3党と、中止に言及した生活者ネットの1議席を合わせると、獲得は66で過半数を上回った。
 自民が伸び悩んだ要因として、党幹部は「コロナの影響はあるだろう」と分析。別の与党幹部は、観客入りの五輪開催にこだわる菅政権の姿勢や政府によるワクチン供給の停滞を挙げ「保守票が都民ファに流れた」と指摘する。
 政府内では、11日に期限が迫るまん延防止等重点措置の延長が有力になっている。重点措置なら、政府の基準でスポーツイベントの観客は定員の50%以内で上限5000人。政府高官は「あくまで感染状況に応じて決める」と強調し、首都圏で緊急事態宣言が発令された場合は「無観客もあり得る」と繰り返す首相の発言を踏まえて判断する考えを示した。

◆圧勝政党なし「1人区」4勢力で分け合う

 今回の都議選は2009年以降3回の選挙と異なり、50議席超を得て圧勝する政党が現れなかった。自民党が都議会第一党を奪還するも、過去2番目に少ない33議席に停滞。31議席に減らして第2会派に後退した都民ファーストの会と拮抗する結果に終わった。第1党が多くを制する傾向にある7つの「1人区」を4勢力が分け合った。
 当選者の定数が1人の「1人区」は、千代田区、中央区、武蔵野市、青梅市、昭島市、小金井市、島部の7つ。過去7回の都議選では、第1党が5つ以上を取ってきた。「風」を受けた政党が圧倒し、「選挙全体の勝敗の鍵を握る」とされてきた。
 09年は直後の衆院選で政権交代を果たすことになる民主党(当時)が5つを獲得した。13年は都議会第一党に返り咲いた自民が7つを独占。17年は「小池旋風」を背景に大躍進した都民ファが島部を除く6つを制した。
 ところが今回は、千代田、青梅、昭島の3カ所を都民ファが、中央、島部の2カ所を自民が、武蔵野と小金井をそれぞれ立憲民主党と無所属が制するなど、ばらばらの結果に。有権者の支持が分散したことが鮮明となった。
 一方、当選者の新旧別では、現職が88人で前回より21人増。新人は33人で前回から21人減った。元職は前回と同数の6人だった。年代別では、40代が42人(33・1%)と最多。次いで50代の38人(29・9%)、60代の24人(18・9%)だった。(小倉貞俊)

◆対立軸混在で「1強」生まず

 自公が過半数割れした都議選について、法政大大学院の白鳥浩教授(現代政治分析)に、民意が割れた結果と秋までに行われる衆院選への影響を聞いた。(聞き手・関口克己)

白鳥浩教授

 今回の都議選で民意が大きく分かれて「1強」を許さなかったのは、小池都政への評価か、衆院選の前哨戦かという要素が混在した戦いだったからだと思う。
 前者と位置付ける人は「自公」対「都民ファーストの会」、後者の場合は「自公」対「立憲民主・共産」という対立軸となり、自公批判票は前者なら都民ファへ、後者なら立共に流れた。自民はコロナ禍で集会や支持者の動員ができなかったこともマイナスだった。
 自民は第1党になったとはいえ、33議席は麻生太郎首相の下で行われ、直後の衆院選で政権を失った2009年の都議選の38議席よりも少ない。今回は立民と共産の合計34議席を下回り、1人区で2勝にとどまったことは、自民の敗北を意味する。告示後も新規感染者は増え、ワクチン確保もうまくいかず、政権の対応の後手後手ぶりが都民の目にも鮮明になったことが敗因だ。
 立民の躍進は共産との選挙協力があったためだ。都議選で勝利したことで、衆院選では全国的に選挙協力を展開する可能性が高い。政策のギャップをどう埋めるかがカギとなる。
 今回の結果が衆院選にそのままつながるとは限らない。衆院選には都民ファがいないためだ。菅政権のコロナ対策に強く反発する人は立民や共産を支持するだろう。一方で、小池氏がかつて所属した自民へと票が流れる可能性もある。ワクチン接種が進み、感染拡大を抑え込めれば自民党に有利になるし、その逆も考えられる。

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