<社説>障害者アート 支援体制息長く手厚く

2021年7月6日 08時01分
 障害者が描く芸術作品に注目が高まっている。商品化で障害者の収入増加につなげる取り組みも生まれている。東京五輪・パラリンピック大会が後押しした側面もある。新型コロナウイルスで、何を大会の遺産(レガシー)とするかの議論はかすんでしまったが、芽生えた種は大事に育てたい。
 東京五輪・パラリンピック大会の招致決定を機に文化庁や厚生労働省は障害者の芸術活動への支援を強化。二〇一八年には議員立法で障害者文化芸術推進法が成立した。鑑賞や創造の機会の拡大や発表の場の確保、販売支援などが掲げられている。
 三〇年の社会のあるべき姿を十七の目標という形で示した国連のSDGs(持続可能な開発目標)が、商品化や展示場所の開設など、企業の取り組みを促している側面もある。SDGsは「誰ひとり取り残さない」を基本理念とし、「人や国の不平等をなくそう」(目標10)という項目もある。
 障害者のアート作品の貸し出しなどをしている株式会社フクフクプラス共同代表の福島治さんは、民間の福祉の担い手に若い世代が出てきていることも、芸術活動が活発になっている要因の一つだと感じているという。「三十代、四十代を中心に、福祉施設の中で閉じてしまうのではなく、社会に開かれ、個性を生かした仕事をしようという機運が高まっている」と話す。
 フクフクプラスは、五輪・パラリンピックが開催される予定だった二〇年に向け、渋谷らしい土産品を作るプロジェクトに携わった。区内の知的・精神障害者と専門学校生が一緒に作った字体「シブヤフォント」を企業がデザインとして採用し、衣類や小物などさまざまな製品が生み出されている=写真。他の地域にも同様の取り組みを広げていきたいという。
 芸術活動は自分を表現する手段として、生きがいという根本の部分に深く関わる。学校教育や生涯教育などで意欲がある障害者が学び続けられる環境づくりや、発表の場を提供する文化施設などの人材育成、行政の支援体制整備など息の長い取り組みが求められる。

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