河井元法相の買収事件 被買収者不起訴は「事実上の司法取引」

2021年7月7日 06時00分
東京地方検察庁=東京・霞が関で

東京地方検察庁=東京・霞が関で

 東京地検特捜部は、河井克行元法相夫妻の有罪判決を見届け、ようやく地元議員ら100人を刑事処分した。高額の現金を受け取った地元議員らも含め全員不起訴とした処分に、識者は「検察に協力すれば不起訴にするという暗黙の約束が守られた」と皮肉る。今後は市民からなる検察審査会が、不起訴の是非を判断する。
 「正直、現金を受け取ったときは『陣中見舞いかな』とも思ったが、検察に逆らえば起訴されると思い、『買収だと思った』とはっきり証言した。もし早々に起訴されていたら検察と争っていたかも。不起訴を真摯に受け止め、一生懸命仕事していくよ」。不起訴となった地元議員は6日、電話取材に淡々と応じた。
 特捜部が、地元議員ら100人に計約2900万円を配ったとして、河井夫妻を公選法違反罪で起訴したのは昨年7月。公選法は買収された側にも3年以下の懲役か禁錮または50万円以下の罰金を科すと定めるが、地元議員らの刑事処分は見送られた。
 検察幹部は当時、「地元政界への影響が大きい。しばらく様子を見て、適切に判断する」と語っていた。
 一貫して無罪を主張していた案里元議員は今年1月、東京地裁で執行猶予付きの有罪判決を受けた。当初無罪を主張していた克行元法相は、地元議員ら100人のうち94人が証人尋問で買収の趣旨を証言するなどした後、一転して罪を認め、6月に実刑判決を言い渡された。
 裁判所が夫妻を有罪としたのを待って、100人全員を不起訴とした特捜部。検察幹部は「証人尋問の内容や判決を吟味して処分した。広島で河井夫妻の力は大きく、地方議員らには現金を受け取らざるを得ない面もあった。巻き込まれた人たちまで起訴すべきではないと判断した」と説明する。
 だが、甲南大の園田寿名誉教授(刑法)は「買収事件で片方だけ起訴されないのは明らかに不自然。検察の意に沿う証言をすれば不起訴にするという事実上の司法取引が行われたのではないか。検察権の乱用で問題だ」と批判する。
 市民団体「河井疑惑をただす会」の山根岩男事務局長(70)は「被買収側が何の罪にも問われないのは異常だ。検察審査会に審査を申し立てる。今後は『検察をただす会』になるかもしれない」と憤った。
 一方、地元広島では有権者の女性(45)が、電話取材に冷ややかに話した。「事件の影響で広島の信頼はガタ落ち。お金をもらった議員は辞職してけじめをつけてほしい」(小沢慧一、三宅千智)

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