求ム「目黒のさんま」 新作創作落語 目黒の祭りで募集

2021年7月7日 07時06分

焼きたてのサンマが無料で振る舞われる目黒のさんま祭

 「さんまは目黒に限る」の落ちで知られる古典落語「目黒のさんま」。その舞台である目黒区で創作落語の募集が始まった。条件は「目黒」または「さんま」という言葉を入れること。区によると募集は初めてで、完成すれば何百年ぶりに新作「目黒のさんま」が誕生する。歴史に名を残すチャンス?

炭火で焼いた気仙沼のサンマ=いずれも目黒区提供

 十月十日に開かれる「目黒のさんま祭」は今年二十五周年を迎える。その記念事業として祭りの実行委員会などが落語を募集した。祭りはもともと落語愛好家で宮城県気仙沼市在住の松井敏郎さん(74)が「『目黒のさんま』の舞台でおいしいサンマを食べて」と区に持ち込んだのがきっかけで始まった。焼きたての気仙沼のサンマが無料で振る舞われるほか、落語家による「目黒のさんま」も演じられ、今では五万人が訪れる人気イベントに成長した。
 祭りで友情を育んだ二つの街は今、友好都市関係にある。今回の企画は気仙沼市側の人々から「目黒のさんまの新作コンテストを行いたい」と声が上がり、区側が思いを受け止めた。
 募集はアマチュア限定。応募者自身が演じて、その様子を撮影した動画をユーチューブに投稿する。予選は、この動画を審査。その後、決勝に進んだ数人がめぐろパーシモンホールで実際に口演し、最優秀者がまつり当日、区民らの前で披露する予定だ。
 昨年はコロナ禍で祭りが中止に追い込まれたが、区の担当者は「今年も祭り本体が中止になっても、動画審査中心なのでこの企画だけは生き残れるはず」と期待する。
 だが、落語を創作し、その上、高座も務められる人は限られそうだ。ある落語関係者は「落語で有名な街が創作落語を募集するのはおもしろいが、『目黒』か『さんま』という言葉を絡めた上、動画で投稿するとなるとハードルは高いのではないか」とみる。
 これは区側も痛感しているようで、落語専門誌に募集を出したり、全国の大学の落語研究会に呼び掛けたりと、懸命にアプローチしているという。
 さて、そもそも海がない目黒でなぜサンマなのか、歴史をひもとこう。目黒区には「茶屋坂」(三田二)と呼ばれる坂道があり、周辺に一軒茶屋があったことに由来するといわれている。区史などによると、江戸時代、目黒地域には将軍のタカ狩り場があり、休息のため農家や茶屋に立ち寄ったという記録が残る。徳川三代将軍・家光もタカ狩りに来るたび、富士山の眺めもよい一軒茶屋を訪れ、主人に「じい、じい」と話し掛けたことから、「爺々(じじ)が茶屋」と呼ばれるようになった。

江戸時代は郊外で大名らがタカ狩りなどを楽しんでいた目黒(国立国会図書館所蔵 名所江戸百景 目黒爺々が茶屋)

旧目黒区公会堂にあった「目黒のさんま」の緞帳(どんちょう)

 落語「目黒のさんま」はこうした背景をもとに生まれたとされる。「うちはまさに落語の舞台」と区の担当者。「今後も将来にわたって語り継がれる落語を見たいし、祭りも長く続けたい」と気合十分。お後がよろしいようで…といきますでしょうか。
 「目黒のさんま」にちなんだ新作落語は八月三十一日まで募集中。演目は二十分以内で枕はなし。「さんま」または「目黒」という言葉を必ず登場させた未発表作で、時代設定は自由。正面から演者の全身が入った高座風景を撮影し、応募者自身のユーチューブアカウントに「限定公開」でアップ。そのURLをコンテストのホームページ=https://www.meguro-sanma25th.com/=に入力する。
 九月中旬までに結果を通知し、十月三日に決勝。問い合わせは目黒区民まつり実行委=電03(5722)9278=へ。

祭りの恒例になっている落語「目黒のさんま」

<古典落語「目黒のさんま」> 目黒にタカ狩りに来た殿様が、初めて庶民の味のさんまを食べて感激する。屋敷で所望すると、殿様向けに上品に調理されたさんまで不満。「どこのさんまか」と尋ねた殿様。「日本橋魚河岸にございます」との回答に、「それはいかん。さんまは目黒に限る」と言ったという落ち
 文・山下葉月/紙面構成・上原梨花
 ◆紙面へのご意見、ご要望は「t-hatsu@tokyo-np.co.jp」へ。

関連キーワード

PR情報

TOKYO発の新着

記事一覧