聖火リレーが県内で始まる 式典会場で「密」、開催中止を訴える市民も

2021年7月7日 07時42分
 東京五輪の聖火リレーが6日、県内で始まり、計11市町を約80人のランナーがつないだ。所沢市では将棋の羽生善治九段も走った。県は新型コロナウイルス感染拡大防止のため、インターネット中継で見るよう呼び掛けていたが、沿道に多くの人が詰め掛けた区間もあり、聖火リレーや五輪の開催に反対する人の姿も見られた。7日は計15市町で実施する。(近藤統義、杉原雄介、大沢令、加藤木信夫)

◆新座の虻川さん「つなげられ、うれしい」

伴走の小中学生らとゴールへ向かうランナーの虻川さん(手前右)=新座市で

 「大会の一年延期で悔しい思いをした人たちの気持ちを希望へとつなげたい」。戸田市の浜田美咲さん(38)は、そんな思いを込めて同市内を走った。
 ボート軽量級女子ダブルスカル日本代表として、二〇〇八年の北京五輪に出場。出産後も選手に復帰して活躍した。「四年に一度に照準を合わせてきた選手にとって延期はつらい。あきらめた選手もいて胸が苦しかった」とアスリートの心情をおもんぱかった。
 コロナ禍での五輪や聖火リレーの開催は賛否が分かれているだけに、不安もあったが、気持ち良く走れたという。「沿道の人たちが笑顔で手を振ってくれて力をもらった。五輪はみんなを元気にする力があると感じた」と声を弾ませた。
 新座市の最終区間では、聖火を手にした同市の大学生虻川(あぶかわ)瑞希さん(19)が伴走の地元小中学生らと一緒にゴールした。虻川さんは「コロナ禍でいろいろな変更があった中で、公道を走り聖火をつなげたことが、とてもうれしい」と笑みを浮かべ、伴走した同市立中学三年の三宅心音(ここね)さん(14)と小崎(こさき)俊介さん(14)も、「一生に一度あるかないかの体験ができた」とうれしそうに話した。

◆川口では出発記念式

出発記念式でレプリカの聖火台の前に集まるランナーたち=川口市の青木町公園で

 新型コロナウイルス対策のまん延防止等重点措置が適用中の川口市では公道走行が中止され、同市青木町公園で「出発記念式」が開かれた。市内を走る予定だった十人のうち、欠席者を除く九人が聖火が入ったランタンを手に記念撮影し、隊列車両を送り出した。
 鈴木昭重さん(86)は、鋳物師だった父と兄が一九六四年の東京五輪の聖火台を手掛けた。公園にはそのレプリカが展示されている。「おやじや兄貴と一緒には走れないけど、立派な火が国立競技場に運ばれるよう祈っている」と鈴木さん。この日は兄の月命日にも当たり「神様のいたずらかな」と笑顔を見せた。
 ジョギングをして準備してきたという平林栄子さん(80)は「人生の総仕上げのつもりだった。ランタンを持たせてもらい、良い記念になった」と話した。
 大野元裕知事はあいさつで、公道走行の中止について「リレーそのもので感染拡大した事例はないが、密になる懸念があり決断せざるを得なかった」と述べた。

◆式典会場「密」に 「中止」訴える市民団体も

横断幕を掲げて五輪や聖火リレーの中止を訴える人たち=川口市の青木町公園で

 出発記念式が開かれた川口市の青木町公園にはランナーの関係者や一般の市民が詰め掛け、「密」になる場面も。奥ノ木信夫市長もあいさつで「ずいぶん大勢の皆さんが集まって、ちょっと予定と違ったなと思った」と本音を漏らした。
 会場では市民団体が横断幕やプラカードを掲げて五輪中止を訴えた。メンバーで医師の辻忠男さん(72)は「県自身が自宅からネット中継を見るよう呼び掛けているのに、なぜコロナ感染を誘発するリレーをするのか説明がつかない。県内での競技の開催も返上してほしい」と話した。
 第二区間の蕨市内のスタート地点周辺でも、開始一時間以上前から多くの人が集まった。ただ、音楽やアナウンスで盛り上げようとするスポンサー企業の隊列への反応は薄く、ランナーへの声援も控えめで、拍手での出迎えがほとんど。沿道には「密集を避けましょう」と書かれたベストを着た市職員らが立ち、「並走はご遠慮ください」など注意の声がよく響いた。
 川口市の森谷(もりや)美由紀さん(47)は、同市内ではリレーが中止になったため蕨市で観覧。四月下旬に実家がある鹿児島県霧島市でも見たといい、「その時よりも静かでコロナの感染者が増えている影響を感じた」と話した。五輪のテレビ観戦は楽しみとしつつ、「ボランティアの人たちが感染しないよう、しっかり対策してほしい」と望んだ。
 新座市の沿道で観覧した同市の内田一さん(43)は「見ていて高揚感は覚えたが、五輪を歓迎できるかというと、それは違う」と複雑な表情。「五輪をやれば感染拡大は避けられないと思う。競技会場や人が集まる場所には近づかず、ネットなど間接的な観戦にとどめたい」と話した。

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