連載16年 読者のおかげ 「定年塾」終え西田小夜子さん 夫婦の現実、痛快さ人気に

2021年7月7日 07時40分

単行本になった著書を読み、連載当時を懐かしむ西田小夜子さん=東京都内で

 2005年3月から生活面に連載された作家の西田小夜子さん(79)によるエッセー「気まぐれ定年塾」が、6月末の765回で終了した。「定年後」の人生模様をユーモラスに、時に「毒」をまぶして軽やかに描いた筆致が人気を集めた。休載することなく16年書き続けた西田さん。「こんなに長く続けられたのは、楽しみにしてくれた読者のおかげ」と感謝する。 (砂本紅年)
 「もうすぐ八十歳。自分でもびっくり」。西田さんはケラケラと笑いながら振り返る。
 東京の下町生まれ。空襲で家を焼かれ、貧しい少女時代を過ごした。高校卒業後、銀行などで働き、四歳上のメーカー技術職の夫と結婚した。「子どもの頃から本を読むのも書くのも好き」。四十代半ばでコンテストに相次いで入賞し、作家の道を歩みだした。

西田小夜子さんの版画。42歳で一念発起し、美術大短大部の通信教育課程に入った

 転機は五十代半ば。定年退職した夫の存在がストレスに。「何もせずに家でゴロゴロしているくせに大威張り。嫌気がさして二回も家出した。そしたら友達が『私は四回よ』と」
 定年夫婦の生態をつづった小説やエッセーが反響を呼び、〇三年には、退職後に暇を持て余す夫と、何かしてほしい妻のための集まり「定年塾」を主宰。その二年後、本紙で毎週連載の「妻と夫の定年塾」が始まった。
 定年後、一日中毛布にくるまって何もしない夫を「みのむし」になぞらえた内容からスタート。毎回、西田さんが家族や友人、ご近所さんから聞いた実話とあって、「親近感が湧く」と読者の共感を呼んだ。
 一八年十月に隔週掲載の「気まぐれ定年塾」に衣替え。熟年離婚、終活、人生百年…。シニアを取り巻く環境は変わりつつも、夫婦の関係は意外と変わらないという。「いつも穏やかで仲の良い夫婦は少ない。多くはけんかをしても、結局元の鞘(さや)に収まっちゃう」
 そんなネタを提供してくれた身近な人たちも高齢となり、病や老いに直面することに。一方が亡くなる夫婦も増え、西田さんも八年前に夫を亡くした。さらにコロナ禍で仲間と気軽に会えなくなり、最近は数人で公園でラジオ体操をしたり、近所を少し散歩したりするぐらい。「夜、一人になると気分が落ち込んで食欲のない時期もあった」
 超長寿社会で、定年後は膨大な時間が広がる。「夫婦の話し合いは若いうちからやって。男性は好きだったことやあこがれていたことをしてはどう? 脳を鍛えれば、まだ間に合う」と奮起を促す。西田さんも終活プランをひそかに練る。「夫と同じ墓ではなく、気心知れた女友達と一緒の墓に入ろうと話している」
 十月には八十歳。「死んじゃう前に形にしておきたい」と、年内にも「定年塾」の連載をまとめた七冊目の単行本を出版する予定だ。「書くのは好きだから、どうしてもやめられない。連載が終わっても死ぬまで書き続けます」

◆浅野素女さん 14日から新連載

 「気まぐれ定年塾」に代わり、十四日から、フリージャーナリストで指圧施療師の浅野素女(もとめ)さん(60)=写真=によるエッセー「柴犬フランス歩記(あるき)」が始まります。隔週水曜掲載。浅野さんは千葉県出身で、フランス在住三十五年。生活者の視点や指圧の施術を通して現地のシニアの話題や、日仏の歴史文化の違いを届けてもらいます。

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