わずか2センチの折り鶴が力強く「核なき世界」米世論に訴える「サダコの鶴」正式展示

2021年7月7日 12時00分

米国の子どもたちが作製した500羽の折り鶴とともに、トルーマン博物館に正式展示された被爆者・佐々木禎子さんの折り鶴

 1945年の原爆投下を命じたトルーマン米大統領(当時)の記録を保存・公開する国立トルーマン図書館に、広島の原爆で被爆して亡くなった佐々木禎子さんの折り鶴「サダコの鶴」が、2日から正式に展示された。今年は日米開戦80年。米国で原爆投下の是非は意見が割れたままだが、小さな折り鶴は「核なき世界」の必要性を力強く訴えている。(米中西部ミズーリ州インディペンデンスで、金杉貴雄、写真も)

◆原爆症のため12歳で亡くなった

 わずか2センチ弱で手のひらに収まるほどの半透明の折り鶴は、照明の下で美しく羽を伸ばし、くっきりと浮かび上がっていた。広島で2歳で被爆、原爆症のため12歳で亡くなった佐々木禎子さんが、ベッドから起き上がれない状態でセロハン紙に針できちんと折り目をつけ、自らの回復と平和を願って作ったものだ。
 「後ろに一緒に展示している500羽の折り鶴は、地元の学校の子どもたちが作製したものです」。約2年間に及ぶ改装を終えて一般公開される前日の1日、案内してくれたカート・グラム館長(54)が説明した。
 折り鶴の正式展示と同時に、トルーマンの孫で図書館名誉理事長のクリフトン・トルーマン・ダニエルさん(64)と息子ウェスリーさん(32)が聞き取った被爆者8人の証言も音声と映像で公開された。原爆を落とされた側の展示は1957年の開館以来初めてだ。

「サダコの鶴」の正式展示について語るクリフトン・トルーマン・ダニエルさん(中央)と息子ウェズリーさん(右)、国立トルーマン図書館のグラム館長(左)

◆トルーマンの孫が展示を後押し

 折り鶴は6年前、自らも被爆者で各地に「サダコの鶴」を寄贈する活動をしてきた兄・雅弘さん(79)から贈られたが、ロビーの片隅に仮置きされていた。
 今回トルーマンの記録として主要展示とするのを後押ししたのが雅弘さんと親交があったダニエルさんだ。2012、13年に被爆者の証言を日本で聞き取り「米国ではやけどや死、破壊、病気など原爆の被害を話したがらない。展示に日本の視点を含めることは重要と考えた」という。
 「日本で話を聞いた時、被爆者は誰も怒りをみせず、全員が『2度と起こらないこと』だけを願っていた」とも振り返り、折り鶴展示は日米共通の平和への思いを反映したとの考えを示した。グラム氏も「原爆投下で起こったこともトルーマンの物語の一部だ。当初から改装時に取り入れるつもりだった」と話す。

◆画期的な展示「平和の起点に」

 「トルーマンの功績を展示する図書館が原爆の少女の折り鶴を受け入れるだけですごいのに、記録の一つに位置付けたのは画期的」。日本在住の雅弘さんは本紙の取材に思いを語った。
 一方、米国内では原爆投下が早期終戦につながったとの意見も根強い。今回の展示でも「原爆は私の命を救った」との元米兵の声も大きく掲示した。昨年の世論調査では原爆投下の判断への賛否は39%対33%と拮抗。若者や民主党支持者で核兵器を否定する割合が高いなど変化の兆しもある。
 雅弘さんは「あの時の投下が、いい悪いでなく原爆のむごさを伝える。今回の展示は米国民に与える影響は大きく、平和への起点になる」と強調した。

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