1度会ったきりの父をイタリアで捜したい…「ハーフ芸人」武内剛さん、映画撮影の費用クラファンで募る

2021年7月7日 12時41分

2歳の時に1度会っただけのカメルーン人の父親への思いを語るお笑い芸人の武内さん=東京都渋谷区で(池田まみ撮影)

 「ぶらっくさむらい」の芸名で活動するお笑い芸人の武内剛さん(40)が、2歳の時に1度会っただけのカメルーン人の父を、暮らしているとされるイタリアで捜す旅のドキュメンタリー映画製作を計画し、クラウドファンディングで資金を募っている。新型コロナウイルスの感染拡大が収束し、自由な海外渡航が可能となる日の1日も早い到来を願いながら、準備を進めている。(小松田健一)

◆1度会ったきり30年余

動物園で小さな男の子を見守る黒人男性。武内さんが2歳の時、母の信子さん(76)に連れられ、父が住んでいたイタリアを訪れた時のスナップ写真だ。これが父子で過ごした最初で最後の機会で、記憶はない。

イタリアの動物園で父と一緒に写真に収まる2歳の武内さん。父子で過ごした唯一の機会だった=武内さん提供、一部画像処理

 武内さんの父はドキュメンタリー映画の監督を目指しカメルーンからイタリアに渡り、現地の語学学校で学んでいた時、日本人の信子さんと出会った。しかし、2人は結婚せず、信子さんは単身で帰国後に武内さんを出産。名古屋市で証券外務員として働きながら武内さんを育てた。
 武内さんは高校卒業後に渡米しニューヨークで演劇を学んだ。帰国後にお笑い芸人へ転身し、2012年にデビュー。「ハーフ芸人あるある」と、自身の容姿もネタにした。ピン(単独)芸人コンクールの「R―1グランプリ」で準決勝進出の実績がある。
 信子さんは教育熱心で、少年期の武内さんにピアノや絵の習い事もさせていた。それは今の芸能活動に役立っている。一方、当時としては珍しかった出自や容姿が常につきまとった。小学1年のころ、ほかの子どもの遊びの輪に加わろうとしたら「ガイジンだ!」と逃げられ、肌の色がほかの子と違うことを知った。
 アルバイトの面接で「日本人に見えないから」と採用されない差別を受けた経験もある。見た目で疎外する仕打ちに「思春期には社会への憎しみを抱いたこともあった」と振り返る。

◆コロナ禍で気持ち募る

 そして昨年冬、イタリアで新型コロナの感染が急拡大したニュースに接し、父に会いたい気持ちが募った。ただ、父を最もよく知る信子さんは数年前から認知症で高齢者施設に入っており、詳しい話を聞けていない。

1982年に父から母の信子さんに届いた手紙。信子さんを気遣い、まだ見ぬ息子への思いなどがイタリア語でびっしりと綴られていたという=武内さん提供、一部画像処理

 そこで両親の知人を頼ったり、父の名前を手がかりにネットで検索したりして調べた結果、現在は60代後半で、イタリアに健在と分かった。小さな映画祭の審査員を務めた記録を見つけ、映画にかかわる仕事をしていたのではといった所在につながる情報も得た。「自分もドキュメンタリー映画を作ろうとしている。親子の縁を感じた」
 どんな結末となるかは分からない。それでも「後悔したくない」と決意を固めた。以前、信子さんが話していた「お父さんはあなたのことを愛していた。きっと会ってくれる」という言葉を信じて。

◆クラウドファンディング詳細

 映画は新型コロナが収束し、出入国時の隔離なしで渡航可能となった段階でイタリアを訪問、撮影する。クラウドファンディングの目標額は武内さんとカメラマンの旅費、通訳費、映像製作費などで100万円。ただ、これは最小限の費用見積もりで「映画館公開などを考えると足りない」と上積みを目指す。8月15日まで募集。7日午前9時時点で約36万円が寄せられた。寄付先は「キャンプファイヤー ぶらっくさむらい」で。
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