「熱海のために何かしたくて」無償の弁当、温泉の開放...土石流被災地で広がる支援

2021年7月8日 06時00分
 大規模土石流に襲われ、一部でライフラインが寸断している静岡県熱海市で、地元の飲食店や宿泊施設が被災者を支援する動きが広がっている。無償で弁当を提供したり、温泉を開放して疲れを癒やしてもらったり。新型コロナウイルス禍で打撃を受ける観光地のサービス業だが、関係者たちは「元気を取り戻すために、何かできることをしたい」と思いを語る。(篠塚辰徳)

◆「微々たることかもしれないけど」

 「微々たることかもしれないけれど、熱海のために何かしたくて…」。土砂の撤去作業が進む伊豆山地区の逢初橋から徒歩で十数分の所で、カフェバーとゲストハウス「ennova(エンノバ)」を経営する小口真世さん(42)が話す。土石流が発生した3日から、被災した人や不安を感じて自宅に帰れない人向けに、シャワーや宿泊場所を無料提供している。

ゲストハウスのベッドを整える「ennova」のスタッフ=静岡県熱海市で

 通常は夕方からの営業開始を昼に早め、会員制交流サイト(SNS)で情報を発信。これまでに十数人が利用した。避難者の大半はホテルで過ごすが、いつまで滞在できるか分からない。小口さんは「これから需要が増えるかもしれない。1人で不安を抱えながらホテルにいる人もきっといる。みんなの気持ちが少しでも楽になれば」と願う。

◆「街全体が暗い。やれることやるしかない」

 街中の居酒屋「バルバルATAMI」のオーナー小川翠さん(34)は6日、おにぎり2個とだし巻き卵、鶏の唐揚げが入った無料の弁当30食を用意し、高齢者や若いカップルに配った。「コロナで観光客がいないのに、さらに被災地になって街全体が暗い。やれることをやるしかない」。定休日を挟んだ9日以降は、市に需要などを聞きながら支援を考えるという。

無料の弁当を提供した居酒屋「バルバルATAMI」の小川翠さん(右)=静岡県熱海市で

◆「せめてお風呂だけでも」

 市が用意した避難先のホテル2カ所がいっぱいで入れず市内の第一小学校に身を寄せた十数人には、近くの宿泊施設が温泉の開放を申し出た。
 施設では土石流災害の影響で利用客のキャンセルが相次ぎ、休業していた。従業員は「避難している人の中には共通の知り合いがいるかもしれない。せめてお風呂だけでも入ってもらいたい」と語る。自宅への帰路が土砂で寸断されて帰れず、夫と一緒に同校に避難している薬真寺紀美江さん(61)は「疲れがたまっていたので、本当にありがたかった」と喜んだ。
 ホテル「ニューウェルシティ湯河原」(同市泉)でも、断水で入浴できない人を対象に入浴料金を半額にしている。

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