<社説>熱海の土石流 盛り土の点検 徹底を

2021年7月8日 07時51分
 静岡県熱海市で三日に起きた土石流災害は、伊豆山地区上部の盛り土が大規模な崩落につながった可能性が指摘されている。人災の側面はなかったのか、県や市の検証が求められる。
 島根、鳥取県で七日、同じ場所に長く雨を降らせる「線状降水帯」が確認されるなど、梅雨前線は活発だ。地盤が緩んでいる箇所も各地にあるとみられ、従来の想定を超えた警戒体制が必要だ。
 熱海の土石流は、崩落した十万立方メートルのうち半分強が盛り土だったとされる。不動産業者が二〇〇七年に残土を運んだというが、県によるドローン画像=写真=からは森林伐採や宅地、太陽光パネルも確認できる。開発の経緯や工事、管理の適切さなど、県や市には徹底した調査を望みたい。
 盛り土で造成された場所の崩落は全国で起きている。〇九年の駿河湾地震や一一年の東日本大震災では高速道路の路肩崩落や住宅地の地滑りが起き、一四年の台風18号では横浜市緑区で盛り土された崖が崩れ、一人が亡くなった。
 国土交通省は盛り土造成地を調査し、今年三月現在で約五万カ所あることを確認した。今後、地下水の排除工や抑止くいなど防災策を進める方針だ。ただ調査は宅地に限られ、今回の崩落起点のような場所は対象から漏れている。
 赤羽一嘉国交相は盛り土造成地を総点検する意向を示したが、新たな危険箇所をどれだけ洗い出せるか。地元住民の間では危険性が認識されながら、行政がそれを十分把握していなかったという実態が、災害後に明らかになることも少なくない。地元の声を丁寧に拾うすべも考えてほしい。
 リニア中央新幹線工事への影響も避けられない。JR東海は南アルプストンネル(静岡市葵区)工事で出る残土三百六十万立方メートルを、大井川上流の東岸に高さ六十メートルまで積み上げる計画だ。周辺では過去に何度か大規模な岩盤崩落が起きた形跡が見つかり、専門家はかねて土石流につながる恐れを指摘している。国交省の有識者会議はこれまで大井川の流量問題を優先してきたが、盛り土を巡る議論も深めなければなるまい。

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