<炎上考>女性が自虐的にふるまうつらさを、企業がからかった「#午後ティー女子」問題 吉良智子

2021年7月14日 10時00分
問題発覚後、企業側が行った謝罪ツイート。謝罪の原因を不快に感じた側に求めている

問題発覚後、企業側が行った謝罪ツイート。謝罪の原因を不快に感じた側に求めている

  • 問題発覚後、企業側が行った謝罪ツイート。謝罪の原因を不快に感じた側に求めている
 もしあなたがある商品の得意客だとして、その商品を供給するメーカーからあなたの容姿や性格、行動をひどく笑いものにされたりからかわれたりしたらどう思うだろうか。当然怒るだろうし、人によってはもう2度とその商品を買いたくなくなるのではないか。
 大手飲料メーカーキリンビバレッジが2018年、ツイッターで「みなさんの周りにいそうな#午後ティー女子」と銘打って、「モデル気取り自尊心高め女子」「ロリもどき自己愛沼女子」「仕切りたがり空回り女子」「ともだち依存系女子」というタイトルで、パターン化された女性のイラストをアップした。「私の周りにもいる…かも!?」と思ったらリツイート、「私だと思ったら」“いいね”ボタンを押してほしいとツイートした。
 「気取り」「もどき」「空回り」「依存」などと、マイナスイメージの言葉が羅列されていることからも想像できるが、「あるある。こういう女子っているよね」と友人同士が互いに悪口を言う会話のノリで描かれている。だが、友人との会話でこれを笑い合うのと、大企業が広告として発信するのは意味合いが違う。
 当該商品は女性ファンが多い。商品を主体的に選ぶ側にもかかわらず、客が売り手にからかわれているのだ。一般的に商品広告に女性のイメージが多いのは、女性が「見られる側」にいるためである。常に見た目で評価され、日々プレッシャーにさらされる。その「痛み」は、女性の自尊心や自己評価を著しく下げる。
 どう痛みをやり過ごすかといえば、他人に批判されて傷つかないために、最初から自虐的にふるまうことしかない。「#午後ティー女子」はそのつらさを笑ってからかったのである。
 当該ツイートは数日後に削除され、続けて「お客様にご不快な思いをおかけし大変申し訳ございませんでした」と謝罪ツイートがなされた。残念ながらこれは「ご不快構文」と呼ばれる不適切な謝罪文に当てはまる。謝罪の原因を不快に感じた側に求めているからである。これを機にチェック体制を刷新したとのことであるが、「不快な思い」ではなく何が問題だったのかを考え直してほしい。

 きら・ともこ 美術史・ジェンダー史研究者

※2021年7月7日東京新聞夕刊に掲載

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