緊急事態宣言で「異例の五輪」と菅首相 「安全安心」と矛盾だらけ 野党「夏祭りも中止なのになぜ?」

2021年7月9日 00時23分
 政府が東京都への4度目の新型コロナウイルス緊急事態宣言発令を決定し、23日開幕の東京五輪は宣言下で開催されることが決まった。首相が繰り返してきた「安全安心の五輪」を、宣言下で実施できるのか。野党からは「矛盾だ」との批判が噴出する。お盆や帰省の時期も控え、宣言中に感染再拡大を招く懸念もぬぐえない。(村上一樹、上野実輝彦)

◆「説得力なし」

 首相は8日の記者会見で、宣言下の五輪を「異例の開催」と認めつつ「コロナという困難に直面する今だからこそ、世界が一つになれることを発信する良い機会だ」と意義を強調した。
 一方、8日の衆院議院運営委員会では、立憲民主党の青柳陽一郎氏が「コロナに打ち勝ってもいない。『安全安心な五輪』も説得力がない」と批判。共産党の志位和夫委員長は記者会見で「酒を出すな、外出するな、運動会、夏祭り、花火大会も全部中止だと(国民に)求めながら、五輪だけやるというのは矛盾した態度だ」と指摘した。
 そもそも緊急事態宣言は、コロナの感染状況が国民生活や経済に甚大な影響を及ぼす恐れがある危機的な状況下だと判断し、発令する。首相は6月の党首討論で五輪に関し「国民の命と安全を守るのは私の責務だから、そうでなければできない」と発言したが、感染状況が悪化しても開催ありきの姿勢は堅持。官邸幹部は先の先進7カ国首脳会議(G7サミット)の結果を受け「各国の支持を得た国際公約」と別の開催理由を挙げる。

◆疑義あり

 これまで政府は、感染拡大防止への強い決意を示しながら、再拡大を抑えられない負の流れを繰り返してきた。
 6月の宣言解除の際、首相は「何より警戒すべきは大きなリバウンドだ」と強調した。だが、都市部を中心に人の流れが増加。首相が「切り札」と位置付けるワクチン接種も、自治体や企業で加速し始めたタイミングで供給が追いつかなくなり、政府自らブレーキをかける形になった。
 西村康稔経済再生担当相は8日の参院議運委で「人出が増え(酒類提供の自粛)要請に応じない店も出てくる中で感染が拡大している」と説明したが、立民の吉川沙織氏は「宣言解除の判断が適切だったのか疑義がある」と指摘した。

新型コロナを巡る菅首相の主な発言

◆軌道修正余儀なく

 五輪の観客問題では、世論の動向が首相の判断に影響を与えた可能性が高い。
 首相は観客入りにこだわっていたが、4日投開票の東京都議選では、中止や無観客開催を訴えた勢力が過半数を獲得。公明党の山口那津男代表が「無観客をベースにした方がよい」と明言し、大会組織委員会の森喜朗前会長が「無観客だっていい」と語るなど、外堀は埋まっていった。政府高官は「国民の総意みたいなものだから流れにさおさすことも大事だ」と軌道修正を認める。
 ただ、無観客開催でも感染拡大の懸念は消えない。五輪後にはお盆や帰省時期を迎え、同時に感染力が強い変異株のデルタ株(インド株)への置き換わりが進むとみられている。政府の基本的対処方針分科会メンバーの舘田一博・東邦大教授は8日、記者団に「気の緩みや慣れなどの重なりを考えると、かなり厳しい状況になっていく」と警鐘を鳴らした。

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