説得力乏しい「安全安心の五輪」 水際対策・バブルを巡る首相発言を点検した

2021年7月10日 06時00分
 菅義偉首相は8日の記者会見で、東京五輪・パラリンピックを巡り、選手や関係者のワクチン接種や行動管理、水際対策などにより「安全安心の大会を成功させる」と表明した。だが、野党や専門家からは実効性に懸念が投げかけられている。会見での首相の発言を点検すると、説得力に乏しい実態が見えてくる。

◆「選手や大会関係者の多くはワクチン接種済み」

 首相は会見で「選手や大会関係者の多くはワクチン接種を済ませている」と指摘。行動は指定されたホテルと事前に提出された外出先に限られるとして「一般国民と接触できないように管理される」と話した。
 国際オリンピック委員会(IOC)によると、選手らのワクチン接種率は80%を超える見通し。しかし、五輪で約19万人、パラリンピックで約11万人いる国内の関係者の接種率は不明。選手の近くで働く人もいるが、公共交通機関の利用は通常通り認められる。
 組織委員会は現在、関係者へのワクチン接種を進めているが、選手を輸送する運転手やボランティアへの2回目の接種は8月までかかる見通し。厚生労働省は2回目の接種から十分な免疫ができるまでに、米ファイザー製は7日、米モデルナ製は14日程度かかると周知しており、ワクチンの効果が大会関係者に行き届くとは言えない状況だ。

◆「一般国民と接触しないように管理」

 首相の言う「行動管理」の効果も不透明だ。組織委は選手以外の関係者に対し入国後14日以内でも宿泊施設などで食事ができなかった場合、コンビニや飲食店の個室の利用を特例で認める。関係者の行動監視を担う組織委は、監視員の数や配置場所など基本的な体制も明らかにしていない。
 水際対策を巡っては、空港でも、トイレや手荷物引き渡し所、カフェなどで、一般客と動線が明確に分かれていないことが野党の視察で判明した。
 立憲民主党は9日、水際対策や行動管理の厳格化を内閣官房などに要望。長妻昭元厚労相は記者団に「政府に対策を求めても『組織委にお願いする』と言うだけ。日本の感染対策の根幹にかかわることなのに、おかしな話だ」と話した。
(大野暢子)

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