<TOKYO2020→21>1都3県無観客 県民「仕方ない」 宿泊業者「厳しい」 地域経済への懸念も

2021年7月10日 07時21分

無観客での開催となる東京五輪サッカー会場の埼玉スタジアム2002=さいたま市緑区美園で

 新型コロナウイルス感染拡大を受け、東京五輪で首都圏一都三県の会場が無観客となることが決まった。埼玉県内ではサッカー、バスケットボール、ゴルフ、射撃の四競技が行われるが、開幕まで二週間という直前での方針の大転換。自治体関係者らは「残念」と声をそろえ、五輪需要が期待できないことへの懸念の声も聞かれた一方で、市民からは「仕方がない」と冷静な反応もあった。
 ゴルフ会場の霞ケ関カンツリー倶楽部がある川越市の観光地では、無観客決定のニュースにも落ち着いた反応だった。観客を市内観光に誘致するため川越駅西口と川越一番街を結ぶシャトルバスを運行する計画だったが、新型コロナ感染が収束しない中で中止が決定済み。多くの客足は望めない状況だっただけに、菓子屋横丁の菓子店主の男性(80)は「感染が収束して観光バスツアーが再開しなければ、客足も戻らない」とあきらめ顔だった。
 サッカーの試合が行われる、さいたま市の埼玉スタジアム2002の近くに住む会社経営の男性(30)は「観客が入った方が盛り上がるし、地元の経済としては良かったのではないか」と指摘。ただ、自身の仕事や生活に直接の関係はないとして、「世の中が新型コロナ対策として有観客を否定するなら仕方がない」と冷静に受け止めた。
 一方、川口市のビジネスホテルには八日夜、早々に埼玉スタジアムでサッカーを観戦予定だった客から宿泊予約のキャンセルが十件ほど入った。「無観客の判断は当然だと思うが、仕事としては厳しい。五十万円ほど売り上げが消えた」と担当者。聖火リレー関係の宿泊はあったが、依然として空室が目立つという。
 さいたま商工会議所の池田一義会頭も「周辺に関連する事業者がたくさんおり、一時的には与える影響は大きい。(事業者も)覚悟していたと思うが、実際に決まったとなると波及度は(大きい)…」と地域経済への影響を懸念した。(中里宏、寺本康弘、近藤統義、前田朋子)

◆ボランティア 落胆の声

 県内の競技会場や最寄り駅周辺で、観客の道案内などを担うはずだった約四千五百人の都市ボランティアたちにも落胆が広がった。
 バスケットボール会場のさいたまスーパーアリーナ(さいたま市)周辺で活動予定だった自営業、児山千香穂(ちかお)さん(61)=同市=は、社会貢献したいとボランティアに応募。八日にはボランティア向けのワクチン接種も受けて本番に備えていた。「今の感染状況では致し方ないが、やっぱり残念」と受け止める。
 同時に「どんな形でも力になれたら」との思いは強く、今月末から同市内の名所を紹介するバーチャルツアーを有志の仲間と始めるという。会場に足を運べない観客に向けて「実際の現場で案内はできなくても、埼玉を何とかアピールできたら」と話す。
 「今後の活動はどうなるのか、何をしたらいいのか分からない」。北与野駅で観客を誘導する役割だった日本語教師の市川幸恵さん(48)=同市=はショックを隠せない。「人生に一度あるかないかの体験」とボランティアに登録。一年以上前から接遇や救護などの研修を受けてきた。「予想はしていたが…。自分にできることをするしかない」と気丈に語った。
 県オリンピック・パラリンピック課は、無観客になり道案内などの活動は難しいが、「大会の盛り上げや埼玉のPR、選手への応援などボランティアの思いを別の形で表現する場を考えたい」としている。(近藤統義、飯田樹与)

◆児童生徒の観戦中止へ 教委「残念」 埼教組「当然」

 首都圏一都三県で東京五輪の無観客開催が決まり、児童生徒を招待する学校連携観戦も中止される見通し。県内ではパラリンピック分も合わせて十市町の公立校など約二万七百人が観戦する予定だった。
 中学校一校の約五十人がサッカーと陸上競技を観戦予定だった、深谷市教育委員会の担当者は「大変残念。せっかくの機会なので大会のレガシーを子どもたちに残してあげたかった」と声を落とす。
 当初は市内十校の中学校のうち、六校の約四百人が観戦を希望。しかし、新型コロナ感染拡大などによる保護者らの不安の声を受け、六月以降にキャンセルする学校が相次いだという。
 一方、児童生徒の観戦中止を県に求めてきた埼玉県教職員組合(埼教組)の北村純一委員長は、「感染や熱中症のリスクを冒してまで参加を考えていたこと自体が問題だ。子どもたちの参加がなくなるのは当然だ」と話した。
 組合には、学校では消毒や検温など感染防止対策に取り組む中、公共交通機関を利用して子どもたちを会場に引率していくことについて、教職員から不安視する声が寄せられていたという。(飯田樹与、渡部穣)

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