日本で暮らし、日本語話すのに存在を認められない…在日クルド人の苦しみ知って ドキュメンタリー映画公開

2021年7月10日 11時44分
 人生の大半を日本で過ごし、日本語を自由に操る。それでも在留資格は得られず、存在を認められない。そんな絶望の中でもがく在日クルド人の青年らを追ったドキュメンタリー映画「東京クルド」が10日から、東京・渋谷のシアター・イメージフォーラムなどで公開が始まった。日向史有監督(40)は「彼らがこの社会に確かに生きていることを知ってほしい」と訴えている。 (近藤統義)

「絶望的な入管制度の中でも、自己実現を図ろうとする若者たちのエネルギーに触れて取材を続けられた」と語る日向監督=東京都新宿区で

 クルド人はトルコやイラク、シリア周辺で古来生活してきた民族。国家を持たない最大の民族と呼ばれ、トルコなど各国で迫害の対象とされている。国内では埼玉県川口市周辺に約1500人が居住。難民申請が認められないため、在留資格がない非正規滞在や、入管施設への収容を一時的に解かれた仮放免の人が少なくない。
 日向さんは小学生のころに英国で過ごし、「アジア人は圧倒的に少数で、部外者意識がずっとあった」という。その原体験に加えて2015年、シリア内戦で大量の難民が欧州に殺到する様子を見て「母国を離れて暮らす人々の思いを聞いてみたい」と思い立った。

映画「東京クルド」の一場面で、将来について語り合うラマザンさん(左)とオザンさん =©2021 DOCUMENTARY JAPANINC.(東風提供)

 難民の支援団体などを訪ね、出会ったのがクルド人の若者たち。その中で当時10代後半だったラマザンさん(23)とオザンさん(22)にカメラを向けた。2人は9歳と6歳で、トルコから迫害を逃れ、それぞれ家族と来日し、地元の小中高校で日本人とともに育ってきた。
 専門学校への進学を目指すラマザンさんと、芸能の仕事を夢見るオザンさん。期待や不安を抱き、未来を想像する姿は日本の若者と変わらない。だが、決定的に違うのは「進学や就職の前段階で排除されていることだ」と日向さんは言う。
 仮放免は働くことも、県外へ自由に移動することも許されない。ラマザンさんは在留資格がないことを理由に複数の学校に入学を断られた。「正直疲れちゃった」。そんな力ない言葉が日向さんの胸に刺さった。
 先の国会では難民申請の回数を制限する入管難民法改正案が提出され、クルド人たちの間で懸念が高まった。事実上の廃案に追い込まれたが、多くの課題が残ったままだ。
 「帰ればいいんだよ。他の国行ってよ」。作中、仮放免の更新に訪れたオザンさんに入管職員が言い放つ言葉に、日向さんは難民申請者に対するこの国の本音をみる。わずか0・4%(19年)という難民認定率がそれを物語る。
 映画には仮放免の若者が解体現場で働いている場面もある。本人たちが撮影に応じたとはいえ不利益になりかねず、日向さんは今も葛藤があるが、「映画に出ることで誰かに自分の存在を認めてもらう。それは彼らの人生にとって、リスクの回避より大切なことかもしれない」と力を込める。
 16日からイオンシネマ川口(川口市)、31日から名古屋シネマテーク(名古屋市)やシネモンド(金沢市)でも上映する。

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