障害ある人への職業訓練にVR 杉並の支援施設で利用者が体験 コロナ禍で活用 「社会へ出る時役立つと思う」
2021年7月11日 06時46分
発達障害や精神障害がある人が就職や復職を目指す訓練にVR(バーチャル・リアリティー=仮想現実)を活用しようという試みが8日、杉並区の就労移行支援事業所「ワークサポート杉並」(区障害者雇用支援事業団、高井戸東4)であり、利用者が訓練を体験した。(小松田健一)
これらの障害によって就労に必要な対人コミュニケーションが十分にできない人もいて、訓練を通じて能力向上を図る。ただ、コロナ禍で外部から専門の講師を招きにくくなっており、訓練の質を維持する狙いがある。
障害者支援のVR技術などを開発するITベンチャー企業「ジョリーグッド」(本社中央区)が、精神科専門医の監修を受けた訓練プログラムを提供し、日ごろから事業所を利用する三人が約一時間の訓練に臨んだ。
プログラムでは、オフィスで資料を取りまとめる際、分からないことがあって、上司や先輩に相談する様子を再現。VR機器の映像には上司と先輩の計三人が登場した。相談を持ちかけ、快く応じてもらったり「忙しい」と断られたりするなど、実際の職場で考えられる場面に接した。
映像視聴後には、誰が一番忙しそうに見えたか、また、その理由などを書き記し、応じてもらったら丁重に謝意を伝えることや、相手のしぐさや表情を見て、誰に相談したらいいかを見極めることが大事など、コミュニケーションに必要なことを学んだ。
発達障害のため昨年六月から事業所を利用し、事務職への就労を希望する女性(28)は「カメラワークがリアルで、現場にいるような感覚がある。社会へ出る時に役立つと思う」と感想を話していた。
訓練は週に一回、計十二回行う予定で、実践を通じて判明した問題点を検証し、プログラムの品質向上につなげる。今後は、発達障害などの人が多く就労する清掃業務や、販売業務の場面を想定したプログラムの導入も検討する。
ワークサポート杉並の南雲芳幸常務理事兼事務局長は「リアルなコミュニケーションを基本としつつ、補完ツールとしてVRを活用したい。効果を検証し、磨いていければいいと思う」と話した。
ジョリーグッドの担当者は「失敗しても何回もやり直せるのがVRの大きな利点で、自己肯定感の獲得につながる」としている。
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