エジプトの刑務所をメディアに公開 刑務作業は選択式、受刑者の処遇に非難も

2021年7月12日 17時00分
 エジプトの刑務所で受刑者への非人道的扱いが横行しているとして、人権団体が政府を非難している。そうした疑惑を払拭ふっしょくしようと、政府は刑務所を海外メディアに公開し、イメージ刷新を図っている。メディアツアーに参加してみると、日本とはまた違う刑務所の姿が見えてきた。(カイロ・蜘手美鶴、写真も)

5月下旬、カイロ近郊のアルマルグ刑務所で、刑務作業として「タヒーナ」を作る受刑者

 ◆エジプトの「塀の中」

 カイロ近郊のアルマルグ刑務所。巨大な正面ゲートを抜けると、広大な畑が広がり、その奥に刑務所が見えてきた。敷地内には緑があふれ、木陰で受刑者が卓球の練習をするなど、刑務所らしくない雰囲気だ。

 ◆対価は施設利用券

 敷地内には居住スペースのほか、刑務作業の工場や厨房ちゅうぼう、図書館や医療棟、イスラム教の礼拝所「モスク」も併設されている。食品工場ではエジプト料理に欠かせないゴマペースト「タヒーナ」を製造しており、鍋をかきまぜていたハサン・アリ受刑者(35)に声をかけると、「クーポンがもらえるから働いているんだ」と答えが返ってきた。
 日本では刑務作業は刑罰の一部とされるが、エジプトでは作業は選択制となっている。対価として施設内で利用するクーポンが渡され、それを使って食事の追加や飲み物を注文できる仕組みになっている。

5月下旬、カイロ近郊のアルマルグ刑務所の面会所で話す受刑者と親族ら

 ◆刑罰とは

 エジプトではかつて、刑罰の一部として土地の開墾などの重労働が刑務作業として課されていた。しかし、2003年の法改正以降、刑罰の一部としての作業は廃止。現在、作業を選ばない場合は、受刑者が共同生活を送る雑居房で過ごすことになっている。
 刑罰がないわけではなく、刑の重さによって自由が制限され、雑居房から出られる時間が短くなったり、消灯時間が早められたりするという。雑居房を交代で掃除することも「刑罰」とみなされ、刑事事件に詳しいハッサン・アリ弁護士は「自由を制限されること自体が刑罰と考えられている」と話す。

5月下旬、カイロ近郊のアルマルグ刑務所の刑務作業でじゅうたんを作る受刑者

 ◆「4人で毛布1枚」

 一方、人権団体が問題視するのが受刑者の処遇だ。メディアツアーでは雑居房は非公開だったが、カイロ市内のトラ刑務所に服役したアラ・アッバシさん(37)は、ベッドもない雑居房に35人が詰め込まれ、体を横向きにしないと全員が横たわれない状態だったという。「床は冷えるのに、毛布は4人で1枚。非人道的な扱いだった」と話す。
 また、刑務所の管理体制が問われる事態も起きている。6月初旬、アルマルグ刑務所内にある少年院の雑居房で、漏電が原因の火災が起きた。看守が雑居房の施錠を解かなかったため、房にいた少年25人中、6人が死亡、15人が負傷する惨事となった。検察当局は管理体制に不備がなかったか、刑務官ら4人から事情を聴いている。

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