酒の取引停止、「密告まがい」のチェックも…西村大臣 国民の空気を読まぬ「北風」政策

2021年7月13日 06時00分

◆「法律で根拠を」

 酒類の提供禁止は、憲法22条の「職業選択の自由」に含まれると解釈されている「営業の自由」の侵害だとも言われる。ただ、それは絶対的に保障される権利ではなく、東京都立大の木村草太教授(憲法)は、ウイルスの毒性の強さやまん延防止に不可欠だとの科学的根拠があれば、規制も合憲とする見方が主流だと説く。
 その半面、酒類提供禁止の根拠になった新型コロナ特別措置法が、政令と厚生労働省に措置の内容を広く委ねている部分に、違憲の疑いがあると考えられるという。木村さんは「酒を出せないと営業できないのと同じような状態になる飲食店もある。それほど重いものなのだから、政令を定める内閣や、厚労省の裁量に委ねるのではなく、国会審議を経た法律で根拠を示すべきだ」と解説する。
 酒を伴う会食は感染リスクが高まるのも事実だ。国立感染症研究所は今月7日、都内でPCR検査を受けた約280人の過去2週間の行動歴を調べた結果を公表した。すると、「酒を伴う3人以上の会食に2回以上行った人」は「不参加の人」などに比べ、感染リスクが約5倍高かった。
 ただ、飲食店でのクラスターはそこまで多いわけではない。厚生労働省によると、2020年1月から今月5日までに全国で確認されたクラスターは8641件。最も多いのは高齢者福祉施設の1735件で、次が職場の1726件。飲食店は3番目で、全体の2割弱の1559件だった。

◆「強権的に抑えるだけでは…」

 立正大の西田公昭教授(社会心理学)は「五輪は有観客の開催にこだわりながら国民に不便な生活を要求し続け、我慢強いと言われる日本人でも我慢できない状況になっている。上から強権的に抑えつけるだけでは、従おうという気持ちは湧いてこない」と訴える。
 さらに「感染リスクが低い、1人で静かに飲むような店まで無差別に規制している。本来、周囲に飛沫を飛ばして大騒ぎすることが悪いのに、いつの間にか酒そのものが悪にされてしまった。根本のずれを修正しないと効果は期待できない」と唱える。
 昭和大の二木芳人客員教授(感染症学)は「感染者の約6割は感染経路が把握できていない。飲食店だけクローズアップすると『飲みに行きさえしなければ大丈夫』と誤ったメッセージを国民に送ることになる」と危惧する。
 「職場や家庭、通勤電車、スポーツ観戦の場などでも感染は起きているのに、そのメカニズムの分析が十分進んでいない。どこでも感染するんだという情報をもっと発信して対策を取らないと、コロナ禍は収束しないだろう」

◆デスクメモ 「太陽」のような政策を

 西村さんは兵庫県の名門・灘高から東京大法学部、旧通商産業省の官僚を経て、衆院議員に転じたというキャリアの持ち主。著書も多い。頭脳明晰(めいせき)なはずなのに、国民の気持ちはいまひとつ理解していないようだ。「北風」ではなく、「太陽」のような政策が求められる。(千)
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