菅政権初の防衛白書 台湾安定「重要」初めて明記 武力行使の旧3要件を削除 変更経緯分かりにくく

2021年7月13日 18時22分

防衛省

◆米と連携で長距離ミサイル導入も

 岸信夫防衛相は13日の閣議で、2021年版の防衛白書を報告した。中国による不透明な軍事力拡大や米国との競争激化への懸念を強調。台湾情勢の安定が「日本や国際社会の安定にとって重要だ」と初めて明記した。4月の日米首脳共同声明が台湾海峡の平和と安定に言及したことを踏まえた。米国と連携し、長射程ミサイルなどを導入する方針も改めて明記した。
 岸氏は同日の記者会見で「米中の軍事的パワーバランスの変化が、地域の平和と安定に影響を与える可能性がある。東シナ海、南シナ海や台湾周辺で軍事活動が活発化しており、動向をいっそう注視する必要がある」と述べた。

◆中国の領海侵入は「国際法違反」明記

 白書は、中国による沖縄県尖閣諸島周辺への領海侵入が「国際法違反」との認識を初めて示した。中国海警局に武器使用を認めた海警法に対して「国際法との整合性から問題ある規定が含まれる」と記した。米中関係に関する項目を初めて設け、経済面を含む両国の競争関係も分析した。
 武器の配備に関しては、厳しさを増す安全保障環境への対処を理由に、12式地対艦誘導弾の射程延長を含む長射程ミサイルの導入方針などを説明した。自民党内に保有論がある敵基地攻撃能力に関連し「抑止力強化について、引き続き検討を行う」と記した。

◆集団的自衛権の新3要件のみ明記

 2021年版の防衛白書は、安倍政権が変更した自衛隊の武力行使の3要件に関し、20年版までは記載した旧3要件が削除され、他国を武力で守る集団的自衛権の行使を認めた新3要件のみを記した。菅政権初の白書は、要件変更の経緯が分かりにくくなった。
 自衛隊の武力行使は、旧3要件では日本に対する直接の攻撃があり、自国防衛のためやむを得ない場合に限り、認められた。安倍晋三前首相は14年に要件を変更し、自国が攻撃されていなくても、集団的自衛権に基づく武力行使を可能とした。
 15~17年版の白書では新3要件のみを記していたが、18~20年は旧3要件も併記。新旧の変化が確認できた。

◆「政府に反対論の存在忘れさせる意図」と専門家

 旧3要件を削除した理由について、防衛省の担当者は「毎年新たな記述が増える中で、紙媒体として分量を削減する必要があり、過去の部分を削除できないか検討した結果」と説明。
 名古屋学院大の飯島滋明教授(憲法学)は「要件を変えた過程がうやむやになる恐れがある。反対論の存在を忘れさせる意図が、政府にあると疑われかねない措置だ」と懸念した。(上野実輝彦)

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