築地市場の跡地に眠る江戸期の庭園「浴恩園」 元都職員が歴史や絵画まとめ冊子出版 発掘調査に期待

2021年7月14日 06時00分
 2018年に閉場した築地市場(東京都中央区)の跡地に眠る江戸時代の庭園「浴恩園よくおんえん」を描いた絵画や歴史をまとめた冊子を、元都職員高橋裕一さん(72)=埼玉県白岡市=が自費出版した。東京五輪・パラリンピック後には、浴恩園の発掘調査の予定があり、高橋さんは「遺構が出土し、庭園の復元につながれば」と願う。(梅野光春)

浴恩園についてまとめた冊子を手にする高橋裕一さん=東京都千代田区で

◆東京湾の海水引き入れた池、潮の満ち引きで景観変化

 浴恩園は、寛政の改革を行った老中松平定信(1758~1829)が下屋敷の庭園として整備。東京湾の海水を引き入れた池があり、潮の満ち引きで景観が変わる特徴があった。明治時代には、隣接する尾張藩の屋敷などとともに海軍用地とされ、関東大震災(1923年)で日本橋魚河岸が損壊した後の35年、築地市場が建設された。
 庭園の様子は、江戸末期にこの屋敷で生まれ、明治時代に造園研究を続けた旧桑名藩士・小沢圭次郎(1842~1932)が収集したり、自ら描いたりした絵図などに残る。桜や紅葉など四季の移ろいや、池に浮かぶ島に橋を渡すなどの広大さもしのばれる。

浴恩園を描いた絵図=国立国会図書館デジタルコレクション提供

◆「江戸時代から眠る歴史、広く知らせたい」

 高橋さんは、国立国会図書館が所蔵する小沢が残した資料などを基に、園の成り立ちや跡地の変遷を追った。近くにある浜離宮恩賜庭園の管理所長を務めた縁があり「築地市場の跡地に、江戸時代からの歴史が眠っていると広く知らせたい」と話す。
 一帯は東京大会で車両基地として活用後、都の再開発に先立つ発掘調査が行われる。都や中央区教育委員会によると、今春の試掘では池の遺構は確認できなかったものの、陶器や瓦など江戸期の遺物が出土した。

浴恩園の発掘調査が期待される築地市場の跡地(中央)

 「東京のど真ん中だから保存範囲は限られるだろうが、都には、往時の姿を少しでもよみがえらせてほしい」と高橋さんは言葉に力を込めた。
 冊子はオールカラーでB5判78ページ、100部製作。実費で提供する。問い合わせは高橋さんのメール=spdc9up9@dolphin.ocn.ne.jp=へ。

関連キーワード


おすすめ情報