エチオピアとナイル下流2か国 巨大ダムの注水めぐり緊張高まる 地域紛争に発展の懸念も

2021年7月14日 19時59分
 【カイロ=蜘手美鶴】ナイル川上流のエチオピア北西部に建設中の巨大ダムへの注水を巡り、エチオピアと下流2カ国との緊張が高まっている。ナイル川の水量減少を懸念するエジプトとスーダンは、注水ペースや貯水量についての合意を求めるが、エチオピアが拒否。今月初旬に一方的に2回目の注水を始めたことで、下流2カ国が国連安全保障理事会に紛争解決を求める事態に発展している。

グランド・エチオピア・ルネサンス・ダム 高さ155メートル、長さ1.8キロ、総貯水量740億立方メートルの水力発電ダムで、アフリカ最大規模。総工費は48億ドル(約5100億円)で発電量は6450メガワット。2011年、貧困を脱する目的で建設を始め、当時の公務員は建設のため給与1カ月分を拠出。政府は小口のダム債券を発行し、国を挙げて建設を進めてきた。

◆規制求めるエジプト、スーダン

 「注水を規制する合意がなければ、何百万人もの農民が水を奪われることになる」。エジプトのシュクリ外相は8日、安保理会合でこう訴えた。アフリカ連合(AU)の仲介の下、半年以内に交渉妥結を求めるチュニジアの提案を承認するよう各国に呼びかけた。
 国土の9割が砂漠のエジプトは生活用水の95%以上をナイル川に依存。スーダンもダムの発電用にナイルの水を利用する。エチオピアは2、3年内に注水を終えるとしているが、エジプトとスーダンは急激な水の減少を防ぐため、さらに長い期間をかけて貯水するよう求めている。
 問題となっているのは、グランド・エチオピア・ルネサンス・ダム。3カ国間で10年に及ぶ協議が続いたが、合意のないままダムの建設だけが進む。昨年7月の雨期に合わせてエチオピアが最初の注水を始め、50億立方メートルを貯水。さらに約30億立方メートルの貯水を目指し、今月に2回目の注水に踏み切った。

◆軍事行動も辞さない構え

 交渉が難航する背景には、ダム建設で水問題の主導権を握りたいエチオピアの思惑がある。ナイル川の水利権を巡っては、これまで地域大国のエジプトが強い立場を示し、2010年まではエチオピアの水資源開発にはエジプトの同意が必要だった。近年はエチオピアも人口増加や経済成長が進み、下流国との力関係の逆転を狙う。
 ただ、長引く交渉に下流国はいら立ちを隠さない。エジプトはエチオピアが意図的に水量を減らせば軍事行動も辞さないとし、スーダンとともに軍事演習してけん制する。
 アフリカ情勢専門のアルアハラム政治戦略研究所(エジプト)のアイマン・アブドルワハブ副代表は「安保理への訴えは最初の一歩。状況が打開できなければ、地域紛争に発展する可能性もある」と指摘する。

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