最低賃金、過去最高の28円増 企業が勤務時間や雇用減らす懸念も

2021年7月14日 20時06分
飲食店などが立ち並ぶ新宿区歌舞伎町の繁華街

飲食店などが立ち並ぶ新宿区歌舞伎町の繁華街

  • 飲食店などが立ち並ぶ新宿区歌舞伎町の繁華街
 中央最低賃金審議会(厚生労働相の諮問機関)の小委員会は14日、2021年度の地域別最低賃金を巡り、全国平均の時給を現行方式となって以来最大の28円引き上げ、930円とする目安をまとめた。
 最低賃金(最賃)を引き上げる流れが戻ったことは、コロナ禍で困窮する非正規労働者の生活向上につながる可能性を秘める。半面、企業が賃金負担を減らすために勤務時間や雇用を減らす事態も招きかねない。専門家は、飲食業など経営の厳しい業種に絞った負担軽減策を政府が進めるべきだと指摘する。

◆「労働時間減ると、給料も減る…」

 「生活のために最賃の引き上げは絶対に必要だけど、さらに勤務時間を減らされる心配もある」
 書籍の出荷作業のアルバイトで生活する東京都内の女性(48)は引き上げを歓迎しつつ、複雑な心境を語る。これまでの時給は最賃と同じ1013円。最賃が1000円を超えた2019年から、2時間早い終業指示が頻発するようになった。勤務時間カットの対象者にならないように仕事の奪い合いが起き、職場の雰囲気は悪くなった。女性は「労働時間が減ると給料も減って、生活も心も貧しくなる」と実情を語る。
 コロナ禍では、小売業など非正規のエッセンシャルワーカーが最賃に近い低賃金で働いている現実が浮き彫りになり、最賃引き上げの機運が強まった。政府は企業に配慮して雇用維持を優先した昨年とは一転し、引き上げを後押しした。

◆行政の丁寧な対応が必要

 これに対し、企業側は審議で「引き上げは人件費を増やし、雇用調整を招く懸念がある」と反発した。実際、失業につながりやすい休業者や時短勤務者は今も多く、5月で3%にとどまる完全失業率が上昇しかねない危うさは続いている。特にコロナ禍が直撃した飲食・宿泊業の従業員は非正規が7割超を占め、脆弱な雇用環境にある。
 日本総研の山田久氏は「コロナ禍の打撃が大きい産業では、上昇した賃金分の企業負担を行政が補助するなど丁寧な対応が必要だ」と話している。(山田晃史)

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