芥川賞に石沢麻依さん、李琴峰さん 直木賞に佐藤究さん、澤田瞳子さん  

2021年7月14日 22時37分

芥川賞に決まった李琴峰さん(右)、直木賞に決まった沢田瞳子さん(左)と佐藤究さん=14日午後、東京都千代田区のホテルで

第165回芥川賞に決まった石沢麻依さん

 第165回芥川賞・直木賞(日本文学振興会主催)の選考会が14日、東京・築地の料亭「新喜楽」で開かれ、芥川賞は石沢麻依さん(41)の「貝に続く場所にて」(「群像」6月号)と李琴峰りことみさん(31)の「彼岸花が咲く島」(「文学界」3月号)に、直木賞は佐藤きわむさん(43)の「テスカトリポカ」(KADOKAWA)と澤田瞳子とうこさん(43)の「星落ちて、なお」(文芸春秋)に決まった。
 芥川賞の李さんは台湾出身。日本語が母国語でない作家の受賞は、2008年の楊逸さん(中国出身)以来二人目。直木賞の佐藤さんの作品は今年の山本周五郎賞受賞作で、直木賞とのダブル受賞となった。
 「貝に続く場所にて」は仙台で生まれ育ち、ドイツで暮らす「私」のもとに、震災で行方不明になったはずの友人が現れる。「彼岸花が咲く島」は、女性が統治し、男性には禁じられた特別な言語がある島が舞台。芥川賞選考委員の松浦寿輝さんは、石沢さんを「小説にしかできない世界」、李さんを「日本語の概念そのものを問い直す野心作」とたたえた。
 「テスカトリポカ」は、メキシコ人の麻薬密売人が臓器売買のため日本に向かい、少年を巨大犯罪へと巻き込む。「星落ちて、なお」は、明治から昭和の東京を舞台に、天才浮世絵師の娘が女絵師として独り立ちする一代記。直木賞選考委員の林真理子さんは、佐藤さんについて「これほどスケールが大きい作品はない」、澤田さんについて「文章力の確かさが高く評価された」と述べた。
 賞金各100万円。贈呈式は8月下旬に東京都内で行われる予定。

◆澤田さん「人々の悩み苦しみ、すくい上げたい」

 芥川賞に決まった李さん、直木賞となった佐藤さんと澤田さんは14日、東京都内で記者会見した。芥川賞の石沢さんはドイツ留学中のため、ネット中継の画面越しに会見に臨んだ。
 李さんは「日本語で書くのは大変だが、日本で暮らしており、ある意味自然なこと」と話し、社会問題を取り込む作風について「文学は自分と社会との対話。大事だと思う問題意識を取り込み、情熱を持って書き続けたい」と語った。

 り・ことみ 1989年、台湾生まれ。2017年、「独舞」で第60回群像新人文学賞優秀作となりデビュー。「ポラリスが降り注ぐ夜」(20年)で第71回芸術選奨文部科学大臣新人賞。東京都在住。

 佐藤さんは暴力描写について「直木賞の選考委員だったら自分の作品を選ばない」と冗談を言いつつ、「世界で実際に起きている麻薬戦争では、小説で描いた以上の出来事が起きている。告発者は命を懸けている。自分も犯罪小説でその一端を伝える意義を感じている」と語った。

 さとう・きわむ 1977年、福岡市生まれ。16年に「QJKJQ」で江戸川乱歩賞、18年に「Ank: a mirroring ape」で大藪春彦賞など。今年、「テスカトリポカ」で山本周五郎賞。東京都在住。

 澤田さんは5回目の候補での受賞決定で「ぽかんとしています」とひと言。「われわれが生きている時間は長い歴史の一瞬。その一瞬の中に、人々の数え切れない悩み苦しみがある。それを少しでもすくい上げられれば」と話した。

 さわだ・とうこ 1977年、京都市出身。2010年「孤鷹(こよう)の天」でデビュー。「若冲」(15年)のほか「火定(かじょう)」「落花」「能楽ものがたり 稚児桜」で直木賞候補。20年「駆け入りの寺」で舟橋聖一文学賞。

 石沢さんは「大きな賞で、震災というテーマを扱ったこともあり、うれしいというより恐ろしいという気持ち」と心情を吐露。「かつての作家たちが声を上げたように、自分も震災の記憶をつなげていけたら」と語った。

 いしざわ・まい 1980年、仙台市生まれ。ドイツの大学院博士課程で、ドイツのルネサンス美術史を研究する。「貝に続く場所にて」で第64回群像新人文学賞を受賞し、デビュー。ドイツ在住。

(出田阿生、松崎晃子)

関連キーワード

PR情報

文化の新着

記事一覧