酒販業者、金融機関に続き自治体にも… 政府が1ヵ月前にも「取引停止」を要請 「法的根拠なし」でまた撤回

2021年7月14日 23時29分
 新型コロナ対策で売り上げが減った酒の販売事業者に対する支援金を巡り、政府が約1カ月前から、酒の提供を続ける飲食店との取引停止を支給要件にするよう都道府県に要請していたことが分かった。これに基づき、東京都などは支援金の申請者に取引停止に関する誓約書を求めていたが、この要請が報道などで明るみとなり政府は14日夜に撤回した。(森本智之、桐山純平)
 政府は、酒の提供自粛に応じない飲食店との取引停止を販売事業者に求める方針を13日に撤回したばかりで、2日連続で方針転換に追い込まれた。一連の要請の責任者である西村康稔経済再生担当相の責任を問う声は強まりそうだ。
 この支援金は、休業要請などに基づき酒の提供をやめた飲食店と取引のある酒類販売事業者に対し、都道府県が支給する仕組み。対象期間は今年4月から。東京都は7月1日に申請の受け付けを開始した。支給額は最大月20万円で、そのうち8割は国が負担する。
 政府は申請開始前の6月11日、都道府県に、飲食店が休業要請などに応じていないことを知りながら取引を続ける酒の販売事業者に支援金を支給するのは「適当ではない」と文書で通知。その上で「飲食店が要請に応じていないことを把握した場合には取引を行わないよう努める旨の書面の提出を(事業者に)求める」ことを要請した。要請について、内閣府は本紙に「法的な根拠はない」と答えた。
 東京都が事業者に求めていた誓約書について、14日午前の衆院内閣委員会では山尾志桜里氏(国民民主)が「極めて強権的で踏み絵のよう」と批判。西村氏は「この誓約書を初めて見た。いま認識した」と答弁。書面の提出を求めたのは国だったにもかかわらず、ちぐはぐな対応が露呈した。その後、都の誓約書が国の要請に基づくものだったことが判明した。
 飲食店での酒の提供自粛を巡っては政府の迷走が続く。13日の撤回以前にも、飲食店に自粛するよう金融機関に働きかける方針を9日に取り下げていた。事業者らから「脅しだ」などと批判が出たためだ。一連の動きを受け、愛知県は14日、政府による都道府県への要請撤回に先立ち、支援金の申請時に誓約書を求めることを取りやめた。

◆東京都「国に従い」一時、支援金に誓約書

 政府が1カ月前から、支援金の申請を巡り、酒の提供をやめない飲食店との取引停止を販売業者が行うよう自治体に要請していたことが判明した。支援金の原資を交付金で受け取る自治体ではすでに、国の意を受けた運用が始まっていた。
 「直接的または間接的に取引を行う飲食店が酒類の提供停止を伴う休業要請等に応じていないことを把握した場合には、当該飲食店との取引を行わない」。東京都ではこうした申請要件を設け、誓約書へのサインを求めている。都の担当者は「国の事務連絡に従った」としていたが、14日夜の国の要請撤回を受け、都も要件から削除した。
 神奈川県は、要請に応じない飲食店と「取引を行わないよう努める」との一文を申請書の裏面に記載。申請すれば同意したとみなすことにしている。ただ、担当者は「この要件に違反していないか調査したり、支給を取りやめたりすることはない」と話す。
 まだ受け付けを始めていない埼玉県は国の要請に沿って準備していたが、13日の政府の要請撤回を受け、扱いを再検討しているという。
 支援金の原資の8割は国の補助金。ある都道府県の担当者は「財源を国に人質にされているようなものなので、国の要請は守らなければいけないと考えている」と明かした。(岡本太、原田晋也)

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