爆発する個性、おうちに パラアート作品を定額レンタルでお届け 武蔵小杉のタワマンで

2021年7月15日 07時04分

山内健資さんの作品

 「パラアートサブスク」と銘打ち、毎月定額でお薦めの絵画を自宅に届けるサービスが今月、川崎・武蔵小杉駅前のタワーマンションで始まった。作品の制作からマンションへの配送までを担うのは、障害のあるアーティストたち。色とりどりの個性を包みこむアートの力で、コロナ禍の「家ナカ時間」を彩る新たな試みが目指すものとは。
 パラアートサブスクは、三井不動産レジデンシャルが始めた「サブスクリプション」と呼ばれる定額制のアートレンタルサービス。第一弾は、分譲マンション「コスギサードアベニューザレジデンス」(中原区、総戸数519戸)の居住者を対象にしている。
 利用料は月額3000円。知的障害者のアート活動を支援するNPO法人「studio FLAT」(スタジオフラット、幸区)から、お薦め作品がランダムに届く。気に入れば、同じ作品をずっとレンタルできるし、購入も可能。ひと月に最大1回、別の作品への交換も行える仕組みだ。

「パラアートサブスク」を立ち上げたstudioFLATの大平さん(右)と三井不動産レジデンシャルの村上さん

 同社によると、コロナ禍で在宅時間が増える中、絵画を自宅に飾りたいけれども「アートと接点がない」「どうやって購入するのか」といった声が居住者から寄せられていたという。
 そこでアート関連のサービスを検討していた同社の村上由梨子さんが、神奈川県の広報紙で偶然目にしたのがFLATの作家たちによる絵画だった。「アートは、誰も差別しない」とも書かれていた。
 「すてきだし、パワーがある。居住者の皆さんと一緒に、アート活動を応援できるのもいい。これだと思いました」と村上さん。
 飾りやすさを考え、大きさは約45センチ四方に統一し、壁に刺した画びょうに作品を掛けるだけ。額装もいらない。ランダムに作品を届けるのは、アートとの出合いを楽しんでもらうための趣向だ。
 作品の制作から梱包(こんぽう)、配送を担うFLATには、障害のある16人の作家が所属。企業とのコラボ商品を手がける売れっ子もいる。幸区の生活介護事業所を拠点とし、才能の発掘や育成、そして作家たちの経済的な自立という大きな目標がある。
 理事長の大平暁(おおだいらさとる)さん(50)は多摩美術大学で絵画を専攻し、14年前から障害者施設で絵画指導を重ねてきた。「この作家にはこの画材がいいとか、障害があっても、サポートがあれば表現活動はできる。自分の想像をはるかに超えることが日々起こります」と語る。

作品を手にポーズをとる山内さん=いずれも川崎市幸区のstudioFLATで

 所属作家の一人、山内健資(たけよし)さん(31)はパン販売に従事していた施設で大平さんに出会い、本格的に創作を始めた。FLATオリジナル商品として、ウイルスを食べる恐竜のキャラクターがTシャツに採用され、注文が相次ぐ人気に。絵本の挿絵も手がけたいという。
 母の緑さん(59)は「リクエストに応じて絵を描くなど、アートを通じて施設外のコミュニケーションが広がった」とほおを緩めた。
 今月9日、パラアートサブスクで初めての配達日を迎えた。緊張した面持ちの山内さんら作家4人で、真っ先に申し込みのあった2世帯に作品を届けると、「玄関に飾りたい。すてきな色合いで華やかになる」と喜ばれたという。
 コロナ禍で作品発表の場は限られているけれども、アートは壁を越えて人をつなぐ、と大平さんは実感している。「障害者アート」という特別な呼称なしに、作品の魅力をフラットに感じてほしいとも願う。
 「障害の有無に関係なく、才能のある人が認められる。そんな当たり前に挑戦するチャンスだし、このサブスクが一つのスタンダードになってほしい」

床に座り、作品の創作をする宮本憲史朗さん。企業とのコラボ商品も手がけている

 文・石川修巳/写真・市川和宏
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