<歌舞伎評 矢内賢二>歌舞伎座「七月大歌舞伎」など 「鈴ヶ森」で光る菊之助

2021年7月16日 07時06分

「御存鈴ヶ森」の菊之助(左)と錦之助 ©松竹

 歌舞伎座は第二部「御存鈴ヶ森(ごぞんじすずがもり)」の尾上菊之助と中村錦之助の顔合わせがいい。菊之助の白井権八は、駕籠(かご)から出て辺りを見回すあたり、いかにも江戸に慣れぬ不安と初々しさ。終盤の長兵衛が手紙を読む間の身構えまで、一貫して罪をもつ身の緊張感が濃く漂う。立ち廻(まわ)りになってからは柔らかみもありながら体のキレがすばらしく、白刃の先までどきどきするような殺気を放っている。錦之助の幡随院長兵衛は、貫禄と名調子で酔わせるのではなく、丁寧なせりふ回しで闇夜の運命的な出会いをドラマとしてしっかりと見せている。市川団蔵をはじめ雲助も手揃(てぞろ)いでおもしろい。第二部は他に松本白鸚(はくおう)初役の「身替座禅(みがわりざぜん)」。
 第一部、市川猿之助が鮮やかな六変化早替わりを見せる「蜘蛛(くも)の絲宿直噺(いとおよづめばなし)」は、押戻しが出るなど昨年の上演からさらに華やかになった。中村梅玉の源頼光が舞台のスケールを一段と大きくしている。第一部は他に市川中車、尾上松緑の「あんまと泥棒」。第一部、第二部は二十九日(十九日は休演)まで。第三部は市川海老蔵五役の「雷神不動北山櫻(なるかみふどうきたやまざくら)」で、十六日まで。
 国立劇場の歌舞伎鑑賞教室公演は「義経千本桜」の「四の切」。中村又五郎の忠信はかっちりとした楷書の演技。前半の忠信はクールな智将(ちしょう)の趣で、したがって義経の話をジッと聞いているあたりに独特の味がある。市川高麗蔵(こまぞう)の静御前、中村歌昇の義経。後半は竹本葵太夫の明瞭な語りが舞台を引き立てる。解説「歌舞伎のみかた」は中村種之助。二十六日まで。二十日は社会人向けの夜公演、二十七日は英語字幕等の付く外国人向けの公演がある。(歌舞伎研究家)

関連キーワード

PR情報

伝統芸能の新着

記事一覧