UDフォント読みやすさ追求 高齢化、視覚障害増に対応

2020年5月22日 02時00分
 多くの人に読みやすいよう工夫された書体「ユニバーサルデザイン(UD)フォント」の利用が広がっている。高齢化が進み、文字が読みにくいと感じる人が増えていることなどへの対応で、自治体の広報紙や鉄道の駅名標、商品表示、一部のパソコンの基本ソフト(OS)にも搭載。一方、専門家らはレイアウトの工夫や、障害に応じたフォント選びの必要性を指摘する。 (吉田瑠里)
 UDフォントは、目の不自由な人も含め、より多くの人が読みやすく、誤読されにくいように考慮した書体。濁点を大きくしたり、「3」や「8」といった似た字は線の長さや角度を調節して違いを明確にしたりしている=イラスト参照。
 現在は「イワタ」や「モリサワ」など複数のフォントメーカーが、独自のデザインのものを作成。教科書体や明朝体、ゴシック体などがあり、駅や食品の表示、教科書などさまざまな生活の場に浸透しつつある。
 近鉄は二〇〇九年から駅名標、運賃表などに使用。ライオンやミツカンは一〇年からさまざまな商品の成分表示などに使っており、ライオンの広報担当者は「法定記載事項や注意表示などが増え、限られたスペースの中で、少しでも見やすくなるようにした」。愛知県豊田市、浜松市など広報紙で活用する自治体も増えている。
 背景の一つが高齢化だ。〇六年にパナソニックとUDフォントを共同開発したイワタの役員阿部浩之さん(63)は「高齢化で細かい字が見えにくい人が増える。対応しようと、急速に広がった」と話す。
 日本眼科医会などは〇九年の調査で、国内の視覚障害者は約百六十四万人と推定。高齢化の進行で、緑内障、糖尿病網膜症など中高年で発症する中途視覚障害が増え、三〇年には二百万人に達すると予測している。
 中途視覚障害者の一人で、四十歳で進行性の目の病気を発症した愛知県清須市の今井陽子さん(51)は、周囲の様子は分かるが、拡大しないと字を読むことができない。買い物などで値札や賞味期限などの「6」と「8」を見間違えることもあるといい、UDフォントは「字の違いがよく分かって見やすい」と話す。
 近年は、発達障害で読み書きが困難な子どもたちにも活用されるように。障害者も使いやすい技術開発に取り組んでいるマイクロソフトは一七年からOSの「Windows10」に教科書体、一八年から明朝体、ゴシック体のUDフォントを搭載し、無料で使えるようにした。

◆レイアウト工夫を 文字加工には注意

 ただ、UDフォントを使うだけでは十分ではないことも。モリサワの橋爪明代さん(36)によると、実際に人に伝える文書の作成などに使う際には、情報の優先順位や配置を考え、大切なことは字を大きく、短文で書くなどして、より分かりやすく工夫する必要がある。一方、強調して斜体にしたり、影を付けたりして加工して使うことで、かえって分かりにくくしてしまうことがあり注意が必要だ。
 今年、モリサワと使用を推進する協定を結んだ三重県いなべ市は一月、橋爪さんらを招いた講習会を実施。職員が使い方を学んだ。
 桜花学園大の柏倉秀克教授(特別支援教育)は「UDフォントは読みやすい人が多く、不特定多数に渡す場合には適しているが、全てを解決できるわけではない」と指摘。「発達障害や視覚障害のある人にはいくつか書体を示し、読みやすいものを選んでもらうといい」と話し、常に相手の立場を考えた使用を促す。

モリサワのUDフォント(商品名「バファリンA」のロゴを除く)で説明が書かれた薬のパッケージ

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