性的暴行 13年後のPTSD認め、懲役8年判決  横浜地裁

2021年7月16日 21時35分
三ツ木努被告の裁判員裁判が開かれた横浜地裁小田原支部

三ツ木努被告の裁判員裁判が開かれた横浜地裁小田原支部

 神奈川県厚木市で2005年、当時高校1年の女性に性的暴行をし、心的外傷後ストレス障害(PTSD)を負わせたとして、強姦致傷罪などに問われた無職三ツ木努被告(43)の裁判員裁判で、横浜地裁小田原支部(佐脇有紀裁判長)は16日、懲役8年(求刑懲役10年)の判決を言い渡した。

◆時効4日前に起訴

 検察側の冒頭陳述などによると、被告のDNA型が現場の遺留物と一致した18年10月の時点で、強姦罪の時効(10年)が成立していたが、横浜地検小田原支部は、事件で女性にPTSDなどを負わせたことが「傷害」に当たるとして、20年7月に強姦致傷罪と強制わいせつ致傷罪で起訴した。両罪の時効(15年)成立の4日前だった。
 公判では女性のPTSDと事件の因果関係が焦点となった。判決理由で佐脇裁判長は「被害者のトラウマ体験は一連の犯行によって生じたと考えられる」として因果関係を認めた。
 判決では強姦致傷罪のみを認定。女性がPTSDを負ったとの医師の診断は十分に信用できるとし、被告の行為は「被害者の人格を無視しており、卑劣極まりない悪質なもの」と指摘した。
 判決によると、三ツ木被告は05年7月19日夜、路上で女性を襲って性的暴行をし、様子を携帯電話で撮影するなどした。(共同)

◆「意義ある判決」と支援者

 「実態に即しており、被害者にとって意義のある判決」。性的暴行から10年以上後に診断された心的外傷後ストレス障害(PTSD)を事件による傷害と認めた16日の横浜地裁小田原支部の判決に、性犯罪被害の支援者からは評価の声が上がった。
 裁判の争点は、女性のPTSDと事件に因果関係があるか。女性がPTSDと診断されたのは事件の13年6カ月後。弁護側はそれまで女性が病院に通わず日常生活を送っていたことなどから診断は信用できないと主張したが、判決は「見かけ上日常生活を送れたのは、回避症状によるもの」とし、診断の信用性を認め、因果関係を認めた。
 刑法の性犯罪規定の見直しを議論した法務省の検討会の委員を務めた上谷さくら弁護士は「事件から診断まで長時間たったにもかかわらず、因果関係を認めたのは聞いた事がない」とした上で、被害から相談に時間がかかることは珍しくないことから「実態に即しており、被害者にとっては意義のある判決」と話す。
 一方で「事件から時間がたつほど、その間にさまざまな要因が生まれ、因果関係の証明は難しい。同様の事件がただちに全て認められるようにはならないだろう」と付け加え、改めて早期支援の重要性を訴える。

◆「国、支援後押しを」

 内閣府の調査によると、性的暴行の被害者の約6割は誰にも相談せず、医師やカウンセラーに相談した人はそれぞれ1%ほど。目白大心理学部専任講師で臨床心理士の斎藤梓さんは「被害者は自分を責めたり、事件を考えないようにしたりする傾向があるため」と分析。上谷弁護士は「刑事責任を問うためだけでなく、被害者保護の観点からも、専門家によるケアは早いほうがいい」と訴える。
 内閣府は警察や医療機関と連携する「ワンストップ支援センター」について、25年までに全都道府県で24時間365日運営できるようにする方針だ。しかし、支援の動きは道半ば。全国のセンターを対象にした内閣府の19年度アンケートによると、半数以上が人手や専門性のあるスタッフの不足を抱えていた。斎藤さんは「国や自治体は予算を確保して後押しをしてほしい」と話した。(米田怜央)

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