認知症の人が働く場を 東京のデイ施設 ノウハウ伝授へ会社設立

2020年5月6日 02時00分

慣れた手つきで車を磨き上げるデイサービスの利用者たち=東京都町田市で

 認知症の人たちが地域で働く取り組みを続けている東京都町田市のデイサービス施設「DAYS(デイズ) BLG!(ビーエルジー)」。この取り組みを全国に広めようと、施設の運営者らが昨年、ノウハウを伝える会社を設立した。すでに全国8カ所で活動が始まっており、施設運営者で社長も務める前田隆行さん(44)は「認知症の人にやさしい街の基盤として全国に広げたい」と話す。
  (五十住和樹)
 昨年七月、同市にあるホンダのディーラー、東京中央町田東店。「DAYS BLG!」に通う六人がそろいのTシャツで、展示された新車の隅々まで雑巾で磨き上げていた。
 二〇一三年からほぼ毎日続いている洗車の「仕事」だ。月に二万円が施設に入り、参加者全員に働いた日数に応じて分配される有償ボランティアだ。八十二歳の男性は「七十歳で運転をやめた。仲間で一緒にやるのは楽しい」と話す。七十二歳の男性は「いい運動になるし、きれいに洗車できれば納得できる」と充実感をにじませた。
 一般的なデイサービスは体操や手作業などが中心で、安全にゆったりと過ごしてもらう考え方が基本。そこでは「お世話をする」「される」の関係になりがちだ。前田さんは認知症の人が仲間とつながり、自分らしさを発揮でき「素」の自分になれる場所にできたらと、デイサービスに通う本人らと共に考えて「働く」に注目した。洗車をはじめ、洋服の生地の裁断、カラオケ店の草取り、野菜の配達、学童保育の紙芝居。さまざまな仕事を通し、認知症の人たちが地域のメンバーとして生きることを支えてきた。
 認知症の人が自分らしく暮らせる社会づくりは、政府の認知症対策推進大綱の柱の一つだが、実質的な取り組みは進んでいない。そこで前田さんは昨年五月、知人ら四人と「100(ひゃく)BLG」(相模原市)を設立した。
 事業では、主にデイサービスを行う事業所向けに、半年間の「立ち上げ研修プログラム」を提供。認知症の人の「やりたい」思いを形にする視点や知識、技術などを伝える。ほかにも、認知症の人たちと地元企業などとをつなぐマッチング、新規事業の立ち上げなどの支援もある。
 同じ理念を掲げる事業所同士で、互いに学び合うネットワークをつくり、情報共有も図る。社名の「100」には、全国百カ所のBLGをつくり、そこを拠点に認知症の人にもやさしい街づくりを広げるという思いを込めた。
 昨年末までに、八カ所のデイサービス施設などが、BLGの名を冠して活動を始めた。所在地は仙台市と東京都八王子市、福井県越前市、長野県諏訪市、滋賀県長浜市、岡山県笠岡市、香川県三豊市、福岡県みやこ町と全国にまたがる。
 具体的な取り組みを始めたのは三カ所。BLG八王子では放置竹林の竹を使って靴べらを製作。BLG長浜では現在、新型コロナウイルス対応で海外産マスクの検品作業などを有償ボランティアで行う。BLGみやこは、小学生向けの認知症サポーター養成講座の先生を無償で引き受ける方向で検討中という。会社を起こしたメンバーの一人で、福祉番組を担当していた元NHKディレクターの平田知弘さん(41)は「認知症の人は何もできない、という偏見を解消したい」と話している。

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