祭典で終わらせない 東京パラ公式ポスターを描いた山口晃さん、葛藤を漫画に

2021年7月17日 17時00分
 東京パラリンピックの公式アートポスターを担当した画家山口晃さん(51)が、制作依頼を受けて発表するまでの顚末をまとめた漫画を描き、インターネット上に公開している。ユーモラスな絵柄で五輪への疑問や抵抗などを盛り込み、単なる祭典で終わらせたくない葛藤と胸の内を明かす。(池田知之)

◆パラアスリートの背景に福島第一原発

 山口さんは、伝統的な日本絵画と西洋の油絵の技法を融合させた作品で知られる人気画家。
 山口さんの作品は20点ある公式ポスターのうちパラリンピック向けの1点。「馬からやヲ射る」と題し、口や足を使って力強くアーチェリーを引く上腕のない女性と、右奥に事故を起こした東京電力福島第一原発の建屋と福島の海、左側に除染で出た放射性廃棄物を詰めたフレコンバッグなどを描く。だが、いずれも女性に比べて小さい。

山口晃さんが描いた東京2020 公式アートポスター「馬からやヲ射る」=©Tokyo2020

 「本当は建屋などをドカンと大きく描きたかった。でも不採用になるのをくぐり抜けて、絵を世まで持っていかなければならなかった」。山口さんはジレンマを語る。

◆ポスターを描くだけでも翼賛になりかねない…

 山口さんは当初「復興五輪」として震災にかこつけた開催や、膨らむ費用を疑問視。5~6月に発表した漫画によると、戦時中に大政翼賛と戦意高揚のプロパガンダで「戦争画」が描かれた歴史から「オリパラに政治が乗っかってきてる以上 普通にポスターを作ること自体が翼賛になりかねない」とも考えた。

山口さんが描いた漫画「当世壁の落書き 五輪パラ輪」(一部)=宮島径さん撮影(ミヅマアートギャラリー提供)

 しかし、漫画では、五輪などに関わる中「その少しでも真ん中に近い所で文句の一つも言ってやりたい」と再考。父親が障害者施設に勤めた経験もあり「パラならば」と制作に応じた。

山口晃さん=曽我部洋平さん撮影(ミヅマアートギャラリー提供)

 ただ、制作を受けたことに会員制交流サイト(SNS)では「いくら高尚な言い訳をしても引き受けたらおしまいだ」との批判も。山口さんは「真意をポスターで示さないのはしゃく。アンサーを示したかった」と説明する。

◆「頼むからちゃんとして」

 新型コロナウイルス禍、東京五輪は一部を除いて無観客での開催が決まり、なお、開催への反対論が根強く残る。
 「復興が招致のダシにすぎぬような五輪に意義はない。開催するからには復興とセットだ」とも考える山口さんは「本来は国の責任。国が開催の基準などを示せば自動的に決まるはず。民がもみ合うのは為政者の思うつぼ。それでも常に不平や文句を言い続けるのは主権者の責務だ」と指摘。「私は反政府じゃない。政府に『頼むからちゃんとして』というお願いです」。
 漫画はネットで閲覧でき、タイトルの「当世壁の落書き 五輪パラ輪」で検索する。

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