熱海土石流で地元消防団が奮闘 続く避難生活、本業の先行きも見えないけれど「地元のために」

2021年7月19日 10時36分
所有する3隻の傍らで、伊豆山港の再開を願う松本早人さん=静岡県熱海市で

所有する3隻の傍らで、伊豆山港の再開を願う松本早人さん=静岡県熱海市で

 土石流が起きた静岡県熱海市伊豆山いずさん地区を管轄する市消防団第4分団の団員35人のうち、5人ほどが避難生活を続けており、OBも含め被災した人が少なくない。それでも発生当初、住民に避難を呼び掛け、消防隊とともに人命救助に当たった。今は避難生活を続けながら、連日、捜索隊の後方支援活動を担う。災害で本業の先行きも見えない中、「地元のために」と奮闘している。 (二神花帆、杉山果奈美)
 現地で捜索隊の車両整理を務める松本早人はやひとさん(46)の本業は、釣り船業を兼ねる漁師。祖父の代から続く漁師の家系で、3歳から船に乗り親しんできた。しかし、職場だった伊豆山港は土石流で土砂が堆積し、茶色い海と化した。
 「悪夢みたい。想像したことがないから、現実だと思えない」
 土石流が発生した直後の3日午前10時40分ごろ、消防団の仲間から、分団の詰め所前に広がる土砂崩れの写真が送られてきた。車で急いで現場に向かったが、到着時にはさらに土砂が辺りを覆う状態に。地元でもともと「崩れるのでは」と懸念されていた起点付近の盛り土が頭に思い浮かんだ。再び土砂の波が来る危険が頭をよぎり、「まずい」と自宅に戻って家族を避難させた。
 自宅の向かいには知り合いの家族が住んでいた。「逃げるよう声を掛けたお母さんと小学生くらいの子どもは、家から出て無事だったが、おばあちゃんは逃げ遅れた。どかんと土石流が来て、跡形もなく家が流された」と振り返る。
 一軒一軒を回って在宅の有無を確かめ、人がいれば救助に当たり、最前線で人命救助に当たった。
 自身が所有する船4隻のうち3隻は無事だったものの、港の再開見通しは立っていない。それでも、16日から仕事の再開に向けて再び船に乗り始めた。
 消防団の業務は交代制になったが、船の仕事には集中できない。「伊豆山地区は小さいし、皆顔見知り。行方不明者の中には知ってる人もいる。最後まで捜さなければとの思いがあるから」と、表情を曇らせた。

◆「地元のことだから何とか自分たちで」

 熱海市消防団第4分団OBの太田利健としやすさん(56)は本業の左官業を営む自宅兼職場が被災した。しかし、「ぜいたくしなきゃ困りゃしない。今はただ行方不明の人を家族のところに帰してあげたい」と、発生から連日、消防隊が拠点にする仲道公民館前で交通整理を続ける。
 太田さんの自宅は3階建てで、1階が仕事道具を入れた倉庫になっていた。土石流は1メートルほどの高さまで流れ込み、倉庫の入り口のシャッターは壊れて開かなくなった。自宅近くの電柱が倒れ、今も電気やガスが止まったまま。今は被害を免れた同市伊豆山地区の実家で暮らしている。
 土石流の発生時は地元のホテルで左官の仕事をしていた。様子を見ようと分団の詰め所に向かっていたところ、再び土石流が襲ってきた。「団員が走って来た。『逃げて』と言われ後ずさった」。間一髪で巻き込まれず、そのまま活動に入った。
 10年ほど前、分団長を務めた後に引退し、災害時のための支援団員になっていた太田さん。「地元のことだから何とか自分たちで救助活動の支援をしたい」と力強く語った。 (杉山果奈美)

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