東京五輪の柔道で唯一の日本人審判員・天野安喜子さん、本業は花火師 「覚悟」と「リズム」で裁く

2021年7月19日 12時00分

昨年12月、柔道男子66キロ級東京五輪代表決定戦で主審を務める天野安喜子さん(右)=東京都文京区の講道館で

 開幕が迫る東京五輪で、天野安喜子あきこさん(50)が柔道で日本からはただ一人の審判員を務める。昨年12月、阿部一二三選手(パーク24)と丸山城志郎選手(ミキハウス)による男子66キロ級日本代表決定戦の主審を経験するなど、女性審判員の第一人者として活躍してきた。江戸時代から続く花火の鍵屋(東京都江戸川区)15代目当主の顔も持ち、審判員と花火師の共通点は「覚悟」と「リズム」と語る。 (森合正範)
 国際柔道連盟(IJF)の2年以上にわたる選考の末、東京五輪で裁く16人に選ばれた。五輪は2008年北京大会以来、2度目。「五輪は選手から出てくる気迫が違う。『安心して見ていられる』と言われるような試合を見せられれば」と淡々と話す。
 選手として活躍した後に、審判員になったのは1995年。92年バルセロナ五輪から柔道女子が正式種目となり、「当時は女性が少なく、育てようと多くの大会から声を掛けてもらった」。過渡期のチャンスを生かし、技術を磨いた。

阿部一二三(右)と丸山城志郎(左)の男子66キロ級代表決定戦で主審を務める天野安喜子さん(中)

 阿部―丸山戦での評価は高い。技を予想しながら「先に、先に」と見やすい位置に動いた。試合開始から24分。場外際で阿部選手が放った大内刈りを丸山選手は返そうと体を反らせた。迷わず、阿部選手の「技あり」を宣告。「最後の場面はスローモーションに見えた。選手には悔いなく、その後の人生も前向きに歩んでいけるような試合をさせられるように心掛けた」。目立たず、選手を引き立て、冷静に裁いた。
 本業は「かぎや~」「たまや~」で知られる鍵屋の花火師。コロナ禍の影響を受け、昨夏の花火大会は全て中止になった。「その時に何をしたのか記録を残して次の世代につなげるのが使命」と考え、江戸川区など、限られた場所で終息祈願の花火を打ち上げた。

花火で赤く染まった現場で陣頭指揮する天野さん=タカオカ邦彦さん撮影

 花火師は危険と隣り合わせ。江戸川河川敷で同時開催される江戸川区花火大会、市川市民納涼花火大会には約100人の職人が関わる。「何かあれば人命に影響する可能性があるので覚悟が必要。それは審判員と似ている」と話す。
 筒からの発射音。花火が開く時の音。反響音。余韻。こだわるのは音とリズム。「間によって感動することもあるし、飽きることもある。柔道で『待て』のタイミングで選手のやる気をそぐこともあれば、攻めが可能になるリズムもある」と共通点を見いだす。
 東京五輪は23日に開幕。柔道は翌24日から始まる。「あくまで主役は選手。いい試合したよねと言われることが私の中で最高の褒め言葉」。選手が悔いなく闘い抜けるように。覚悟を持って畳に上がる。

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