「決勝でまたやろう」3年越し約束の舞台へ 柔道・田代未来&クラリス・アグベニェヌ<世界は同志㊥>

2021年7月20日 06時00分
2019年の世界選手権の決勝、延長戦で技ありを奪われ、フランスのクラリス・アグベニェヌ(左)に敗れた田代未来=日本武道館で

2019年の世界選手権の決勝、延長戦で技ありを奪われ、フランスのクラリス・アグベニェヌ(左)に敗れた田代未来=日本武道館で

 耳元で女王のささやきが聞こえた。
 「オリンピックのファイナルでまたやろう」
 2018年柔道の世界選手権(バクー)。女子63キロ級の決勝後、田代未来(コマツ)は歩み寄ってきたクラリス・アグベニェヌ(フランス)の言葉にうなずいた。東京五輪の決勝で闘う。2人は約束を交わした。

◆「絶対に超えたい」天敵

 「相手がアグベニェヌ選手だから頑張れる。自分を成長させてくれるし、尊敬している。絶対に超えたい存在」
 27歳の田代からみれば、過去1勝9敗の天敵。特に16年リオデジャネイロ五輪準決勝での敗戦は忘れられない。唯一勝利を収めたのは17年12月のマスターズ大会だった。
 リオ五輪2位で世界選手権4連覇中のアグベニェヌはフランス代表の旗手を務めるスター選手。28歳の女王は世界ランキング1位で金メダルの最有力候補だ。
 以前から2人は各国から集まる国際合宿で顔を合わせる機会が多かった。田代はアグベニェヌのことを「どこで見ても彼女は一番練習をしている」と稽古熱心さを感じていた。18年、東京都内での国際合宿を終えると、アグベニェヌは田代が所属するコマツの道場を訪れ、一緒に汗を流した。
 「国際合宿なら組むのは1週間で1回くらい。コマツでは何本もお願いして、快く受けてくれた。その時にいろいろと感じることがあった」。ライバルとの緊張感あふれる乱取り。だけど、楽しい。4分間が短く感じた。相手は何回でも受けてくれる。器が大きい。あっという間に練習時間は過ぎ去った。

◆死闘11分11秒経て11度目の対戦へ

 19年世界選手権(東京)の決勝。2大会連続で同じ顔合わせ。11分11秒の激闘を繰り広げ、試合後、2人はしばらく大の字になったまま動けなかった。起き上がると抱き合った。精根尽き果てた状態で、互いに日本語で言った。
 「ありがとうございました」
 アグベニェヌは記者会見で「私の柔道キャリアで1番激しい闘い」と振り返り、「田代選手は素晴らしい柔道家」とたたえた。
 3年越しの約束。かなうのは7月27日、東京・日本武道館。田代にはアグベニェヌ以上の練習を積んできた自負がある。11度目の対戦はライバル物語のクライマックスを迎える。(森合正範)

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